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蕁麻疹(じんましん) 原因・症状・対処法

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蕁麻疹(じんましん)のイメージ画像

蕁麻疹とは

蕁麻疹とは、皮膚の一部が盛り上がり(膨疹)、強いかゆみを伴う皮膚疾患です。個々の膨疹は数十分から24時間以内に跡かたなく消えることが特徴ですが、場所を変えて出没します。2~3日続いて軽快する場合や、毎日出没して長期にわたる場合もあります。身体のどの部位にも生じ、全身に及ぶこともあります。

写真提供:兵庫医科大学皮膚科 夏秋 優 先生

蕁麻疹の原因

蕁麻疹は皮膚に存在するマスト細胞から刺激によってヒスタミンが放出することによって発症します。放出されたヒスタミンが皮膚中の血管や神経に作用することで、膨疹やかゆみなどの症状が起こります(ヒスタミンが放出する仕組みは色々ありますが、原因物質(アレルゲン)がマスト細胞表面のIgEに結合し、マスト細胞が活性化してヒスタミンを放出する機序のものはⅠ型アレルギーと呼ばれます)。

蕁麻疹は「原因不明なもの(特発性蕁麻疹)」と、「特定の刺激で膨疹が現れるもの(刺激誘発型蕁麻疹)」に大別されます。さらに特発性蕁麻疹は、発症してからの期間が6週間以内のものは「急性蕁麻疹」、6週間以上続くものは「慢性蕁麻疹」に分類されます。

そして、原因が不明な特発性蕁麻疹が全体の約7割を占めているといわれています。

ここでは、刺激誘発型蕁麻疹の代表的な原因を示します。

食物 甲殻類、乳製品、卵、そば、ピーナッツ、小麦、大豆など
薬剤 抗生剤などの医薬品や防腐剤など
昆虫 ハチや毛虫など
植物 天然ゴム、イラクサなど
食物依存性運動誘発アナフィラキシー 小麦、エビなどの特定の食物を摂取後、数時間以内に運動すると蕁麻疹を含めたアナフィラキシー症状を起こすもの
非アレルギー性蕁麻疹 造影剤やサバなどの食品といった特定のもの(IgE経路のⅠ型アレルギー機序を介さない)
アスピリン蕁麻疹 アスピリンなど非ステロイド系消炎鎮痛薬の内服、注射、外用
物理性蕁麻疹 機械的擦過や持続的な圧迫、寒冷暴露(寒冷蕁麻疹)、温熱負荷、日光照射、水との接触など
コリン性蕁麻疹 入浴や運動、精神的緊張などによる発汗刺激
接触蕁麻疹 特定の刺激物との接触
ストレス 疲労や精神的ストレス
ハウスダスト ダニの死がい・フン、カビ、綿ボコリ、花粉、ペットの毛など

蕁麻疹の主な病型には、特発性と刺激誘発型の他、血管性浮腫や蕁麻疹関連疾患があります。

蕁麻疹の症状

蕁麻疹の主な症状は、皮膚に赤い膨疹が現れ、強いかゆみを伴います。またチクチクとした痛みやヒリヒリとした焼けるような痛みを伴う場合もあります。膨疹は、境界がはっきりした円形、楕円形、地図状など様々な形状をとります。

多くの場合は皮膚症状のみにとどまる傾向ですが、蕁麻疹で注意が必要なのは、重篤なアレルギー反応としてアナフィラキシーショックが起こる可能性です。皮膚症状に加えて以下のような症状がみられる場合、意識障害や血圧低下、心停止に至る危険性もあり医療機関を受診してください。

  • まぶたや唇の腫れ
  • 腹痛
  • 発熱
  • 気道閉塞感(息が詰まる感じ、呼吸がしづらい)
  • イガイガする喉のかゆみや痛み
  • 嘔吐
  • めまい、立ちくらみ
  • 倦怠感

など

呼吸困難や意識障害などがみられる場合は、すぐに救急車を呼んでください。

遺伝や感染について

蕁麻疹は、一部の例外(遺伝性血管性浮腫など)を除いて遺伝はしません。アトピー体質の方に生じやすいアレルギー性蕁麻疹は、それ自体は遺伝しませんが、アトピー体質が遺伝することによってアレルギー性蕁麻疹を発症しやすい可能性はあります。しかし、原因となるアレルギー物質は個人の生活環境などに左右されるため、蕁麻疹を起こす原因物質は親子など家族であっても、通常各々異なります。また、蕁麻疹は他人に感染はしません。

蕁麻疹の対処法・治療法

蕁麻疹の対処法

蕁麻疹が現れた際に、対処できる方法を以下に示します。

  • 搔かない(掻くことで膨疹やかゆみが広がる)
  • 原因との接触を避ける(原因物質が皮膚に触れている場合は洗い流すなど)
  • 衣類などによる摩擦、圧迫の刺激を減らす
  • 安静にする
  • 温めないで冷やす(ただし、寒冷刺激による蕁麻疹の場合は、冷やすと症状が悪化するので冷やさない)

蕁麻疹の治療法

皮膚に存在するマスト細胞から放出されるヒスタミンが蕁麻疹の発生メカニズムに深く関わっているため、蕁麻疹の分類にかかわらず、抗ヒスタミン薬または抗ヒスタミン作用を持つ抗アレルギー薬での治療が一般的です。皮膚科では抗ヒスタミン作用のある内服薬による治療を行いますが、蕁麻疹が急性か慢性かによって、内服期間は異なります。外用薬は補助的ですが、清涼感成分を含んだかゆみ止めがあり、清涼感によるかゆみを鎮める作用が期待されます。

原因が明らかであれば、原因物質を避けましょう。原因がわからない場合が多いのですが、医療機関の検査で原因や蕁麻疹のタイプを診断できることもあります。

かゆみや痛みの症状が強い場合や、症状が広範囲に広がる、繰り返す、長引く場合などは医療機関を受診してください。

まとめ

蕁麻疹は、皮膚の一部が盛り上がり(膨疹)、強いかゆみを伴う皮膚疾患です。個々の膨疹は24時間以内に消えていきますが、場所を変えて出没します。アレルギーなど、原因が判明することはむしろ少なく、原因のわからない特発性蕁麻疹が多くみられます。
蕁麻疹が発生した場合は、掻かないようにして冷やすこと、また、治療薬として抗ヒスタミン薬や抗アレルギー薬を使用します。蕁麻疹の発症や悪化を避けるためには、日常生活でできるだけストレスや疲労を溜めないようにしましょう。原因がわかっている場合は原因物質との接触を避けることが大切です。

監修

檜垣 祐子(ひがき ゆうこ)

若松町こころとひふのクリニック院長
医学博士、皮膚科専門医。東京女子医科大学附属女性生涯健康センター教授・副所長を経て現職。専門はアトピー性皮膚炎、皮膚心身医学。著書に『皮膚科専門医が教えるやってはいけないスキンケア』(草思社)など。

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