陰部のかゆみ(男性)とは
男性の陰部のかゆみは、汗、蒸れ、擦れ、雑菌などによって引き起こされる症状です。症状は、一時的な不快感から日常生活を過ごすにあたって支障をきたすほどの深刻なものまで多岐にわたります。しかし、陰部の悩みは気軽に相談できないという方も多いため、いつの間にか深刻な悩みとなることもあります。
男性の陰部は非常にデリケートな部分で、ちょっとした刺激にも敏感に反応してしまう皮膚構造をしています。この陰部は汗、蒸れ、擦れ、雑菌などかゆみを引き起こす刺激が多く発生する場所でもあります。
また、男性の陰部のかゆみの多くは「陰部そう痒症」と呼ばれるものです。これは陰嚢(陰のう)や肛門周辺に発生します。かゆみの原因をいんきんたむし(股部白癬)と心配される場合も少なくありませんが、いんきんたむしが陰のうで発症することはその皮膚構造からして稀です。
陰部のかゆみ(男性)の原因
男性の陰部のかゆみには、様々な原因があります。その原因を理解することで、適切な対処につながります。
男性の陰部がかゆくなる主な原因を、以下に示します。
- 汗による蒸れ
- 下着や皮膚同士の擦れ
- 衣類・洗浄剤・衛生用品などによるかぶれ
- 皮膚の乾燥
- 加齢による皮脂分泌の低下や皮膚の菲薄化(薄くなること)
- 雑菌などの繁殖
かゆみを伴う感染症
男性の陰部のかゆみの中には、感染症が原因となる場合もあります。
- いんきんたむし(股部白癬)
- カビの一種である白癬菌(はくせんきん)による感染症です。主に、本人や家族の水虫(足白癬)から白癬菌がうつり、角層で増殖して引き起こされます。症状は、太ももの内側から足の付け根(陰股部)にかけて、強いかゆみと円形の赤みなどが起こります。いんきんたむしが陰のうに広がることは稀です。陰のうの角層は薄く、白癬菌が繁殖することが難しいからです。
- 性病(性感染症)
- 性器クラミジア感染症・淋病・性器ヘルペスなどは細菌やウイルスなどが原因で起こる感染症です。陰部のかゆみや違和感、排尿時の痛み、異臭、尿道から膿やその他の分泌物が出る場合もあります。
- 性器ヘルペス
- ヘルペスウイルスによる感染症の一つです。初感染は性行為により感染することが多く、男性の場合は亀頭や包皮に多くみられます。小水疱などが生じ激痛を伴うこともあります。初感染後はウイルスが神経節に潜伏し、免疫力の低下などによってたびたび再発する場合があります。症状の出現時には、パートナーへの感染リスクがありますので注意が必要です。
- 尖圭コンジローマ
- ヒト乳頭腫ウイルス(HPV)による感染症の一つです。主に性行為によって感染します。男性の場合は亀頭や包皮、陰茎などにもみられ、イボのような丘疹が多発し、融合してカリフラワー様になることもあります。放置すると増数したり、パートナーに感染する可能性もあるため注意が必要です。
これらの原因により、男性の陰部にかゆみが発生することがあります。それぞれの原因に応じて適切に治療することが重要で、特に感染症の疑いがある場合は、速やかに医療機関を受診してください。
陰部のかゆみ(男性)の症状
男性の陰部にかゆみを引き起こす疾患は、それぞれに症状が異なります。ここでは、主な疾患の症状について紹介します。
疾患名 | 症状 |
---|---|
皮膚そう痒症 | かゆみはあるが、それに相当する発疹が見られない。 |
股ずれ(間擦疹) | 皮膚の赤みと共に痛みやかゆみが起こることが特徴。皮膚同士の摩擦が原因で、暑い気候や運動後に症状が悪化する場合がある。 |
陰のう湿疹 | 陰のうに湿疹が発生することで、かゆみや赤み、かさつきを生じる。 |
かぶれ(接触皮膚炎) | 皮膚に赤みやかゆみ、時に水ぶくれを生じる。刺激性のかぶれでは痛みを生じる場合がある。 |
いんきんたむし(股部白癬) | 股部周辺に円形や不規則形の赤い小さく盛り上がった発疹が現れ、強いかゆみを伴う。発疹の中心部の赤みが次第に薄くなり、リング状となることが特徴。 |
性病(性感染症) | 激しいかゆみの他、排尿時の痛み・異常な分泌物・赤みや発疹などがみられる場合がある。 |
このように疾患ごとに症状が異なるため、症状が気になる場合は早めに医療機関を受診してください。
陰部のかゆみ(男性)の対処法・治療法、予防法
陰部のかゆみ(男性)の対処法・治療法
かゆみが軽度な場合は、かゆみ止めや抗炎症成分などを配合した市販の外用薬を使用します。必ずしも患部を洗ってから外用する必要はありませんが、患部は清潔に保ちましょう。症状を繰り返す場合や、長期間続く場合は、医療機関を受診しましょう。
陰部のかゆみ(男性)の予防法
陰部のかゆみの多くは、適切な日々のケアによって予防することができます。
- 清潔に保つ
- 陰部を温水で優しく洗い、皮膚を適切に乾かします。清潔に保つ目的で過剰な洗浄を行うと、皮脂を除去しすぎてしまい皮膚が乾燥してしまうため、注意してください。
- 肌への刺激を避ける
- 石鹸や洗浄料は、できるだけ肌に優しいものを選びましょう。また、締め付けが強い下着を避け、通気性の良い素材を選ぶことも重要です。
まとめ
男性の陰部に現れるかゆみの原因は様々です。かゆみの原因を早く特定し、適切な治療を受けることで、症状の改善が期待できます。また、日々の生活習慣を整え、症状が持続するなど、少しでも気になることがある場合は、医療機関を受診し、専門医に相談することが重要です。適切な情報を取り入れ、ケアを行い、快適な日々を送りましょう。
監修
檜垣 祐子(ひがき ゆうこ)
若松町こころとひふのクリニック院長
医学博士、皮膚科専門医。東京女子医科大学附属女性生涯健康センター教授・副所長を経て現職。専門はアトピー性皮膚炎、皮膚心身医学。著書に『皮膚科専門医が教えるやってはいけないスキンケア』(草思社)など。