赤ちゃん・子どもの皮膚の特徴
赤ちゃんや子どもの皮膚の特徴を以下に示します。
- 皮膚が未熟で角層が薄い。
- 皮膚バリア機能が弱く、外からの刺激を受けやすい。
- 体温が高い。
- 汗をかきやすい。
- 免疫機能が未発達。
赤ちゃんや子どもの皮膚は、大人とほぼ同じ構造ですが、大人に比べて角層が薄く、皮膚バリア機能が未熟です。そのため、擦れや化学物質などの外部からの刺激に対して非常に敏感です。また、体温が高く、汗をかきやすいため、大人よりも虫に刺されやすいともいわれています。
赤ちゃん・子どもの虫刺されとは
虫刺されとは、虫に「刺される」「咬まれる」「吸血される」といったことが原因で起こる皮膚炎です。一般的には、虫によって皮膚に注入された成分に対するアレルギー反応によって、皮膚にかゆみや赤み、腫れや湿疹などが生じます。赤ちゃんや子どもは、大人と比べて体温が高く汗をかきやすいため、蚊やダニなどの虫に刺されやすいだけでなく、免疫機能が未発達なため、虫刺されの症状が強く現れる場合があります。
主な症状として、かゆみだけでなく、赤み・腫れも多く、場合によっては痛みを伴うこともあります。しかし、赤ちゃんや子どもは何かしらの症状が出ていても、うまく伝えられないため、泣き止まないなど不快感を示すサインを見逃さないようにしましょう。
赤ちゃん・子どもの虫刺されによる腫れやかゆみの原因
虫刺されによる腫れ・かゆみは主に、皮膚に注入された虫由来の唾液腺物質などに対するアレルギー反応が原因で生じます。このアレルギー反応には、刺された直後に起こる即時型、1~2日後に起こる遅延型があり、赤ちゃんや子どもの場合は免疫機能が未発達なため、遅延型アレルギー反応がより強く現れる傾向があります。
虫刺され(虫刺症)によるアレルギー反応についてはこちらをご覧ください
赤ちゃん・子どもの虫刺されによる腫れやかゆみの症状
赤ちゃんや子どもの場合、大人よりも強く症状が出ることが多く、腫れ・広範囲の赤み、強いかゆみを生じます。また赤ちゃんや子どもは、掻くことを我慢できず、薄く敏感な皮膚を掻き壊してしまい、とびひといった二次感染を引き起こすリスクも高まります。
とびひ(伝染性膿痂疹)とは
とびひとは、掻き壊した皮膚に細菌が感染することで起こる皮膚感染症です。まるで「飛び火」するかのように、患部に触れた部分から新たな病変が現れ伝染すること(接触感染)から、「とびひ」と呼ばれていますが、医学的には「伝染性膿痂疹(でんせんせいのうかしん)」といいます。
感染した細菌によって症状は異なりますが、赤く腫れ、水ぶくれやびらん、膿や痂疲(かさぶた)が生じます。患部を掻いた手で他の場所に触れることにより、症状が広がってしまうため、周りの人にも感染しないように注意が必要です。
赤ちゃん・子どもの虫刺されの対処法・治療法、予防法
赤ちゃん・子どもの虫刺されの対処法・治療法
赤ちゃんや子どもが虫に刺された場合、まずは、早急に患部を冷やすことが大事です。軽症の場合は、市販のかゆみ止めの外用薬を使用しましょう。抗ヒスタミン成分が配合されているものや、赤みや腫れが強い場合はステロイド成分が配合された外用薬を使用します。
赤ちゃんや子どもの症状は、大人よりも強く出ることがあるため、場合によっては早めにステロイド外用薬を使用し、短期間で治療させることも大切です。
赤ちゃんや子どもは肌を掻き壊しやすく、とびひを引き起こすこともあるので、パッチタイプの貼付剤を使用することもできます。ただし長時間貼り続けるとかぶれることがあるため、使用する場合は説明書をよく読み、正しく使用しましょう。
赤ちゃんや子どもの肌は敏感なため、使用する外用薬選びや使用量、使用頻度に注意しましょう。
また、「症状が改善されない」「発熱など他の症状がみられる」場合は、皮膚科や小児科を受診しましょう。
外用薬を使用する前に、刺された患部を優しく洗浄しましょう。また、赤ちゃんや子どもの爪を短く切り、爪が鋭くないように整えることで、自ら肌を傷つけることが少なくなり、掻き壊しを防ぎます。それでも赤ちゃんが掻きむしる場合は、「ミトン」などを使用することも効果的です。
赤ちゃん・子どもの虫刺されの予防法
赤ちゃんや子どもが安心して外で遊べるよう、虫刺されの予防をしっかりと行うことが大切です。主な予防法を以下に示します。
肌の露出を控える
外出時には、赤ちゃんや子どもの肌の露出を最小限に抑えることを意識しましょう。具体的には、長袖のシャツ・長ズボン・帽子を着用させることで、虫に直接触れる機会を減らせます。
物理的なバリアの設置
家の中では、窓やドアに網戸を設置して虫が室内に侵入することを防ぎます。
虫除け剤の使用
赤ちゃんや子どもの肌に使用する虫除け剤の成分には、ディートとイカリジンがあります。製品によって、使用する年齢や回数、効果のある虫が異なるため、製品に記載されている注意事項を確認しましょう。また虫除け剤を過信せず、肌の露出を減らすことを心がけましょう。
虫除けの基礎知識についてはこちらをご覧ください
このほか、雑貨ですが、虫の嫌がる天然精油を配合したものもあります。ディートやイカリジンなどを配合した医薬品や医薬部外品よりも虫除け効果は弱いですが、手軽に使えるものとして利用できます。
これらの方法を適切に行うことで、赤ちゃんや子どもの虫刺されに対して予防効果が期待できます。
赤ちゃんや子どもがダニに刺されたときの対処
赤ちゃんや子どもは、皮膚がやわらかく、布団・カーペット・ぬいぐるみなどに1日中触れている機会が多いため、ダニ刺されが気になるかと思います。ただ、赤ちゃんや子どもだからといって、刺されることが特に多いわけではないため、必要以上に気にする必要性はありません。
もし刺された場合は、蚊に刺されたときと同じように対処しましょう。症状がひどい場合などは医師に相談し、適切な治療を受けるようにしましょう。
また、ダニに刺されるリスクを減らすために、ダニが生息しやすい場所を定期的に洗濯や清掃することが効果的です。
まとめ
赤ちゃんや子どもの虫刺されは、適切な予防と早急な対処が必要です。虫刺されを完全に避けることは難しいですが、予防策を実践することでリスクをできるだけ少なくすることができます。また、刺された際には外用薬を適切に使用し、必要に応じて医療機関を受診しましょう。
監修
小西 真絢(こにし まあや)
巣鴨千石皮ふ科 院長
東京都出身。杏林大学医学部卒業後、東京医科歯科大学皮膚科へ入局。2017年巣鴨千石皮ふ科開院。2020年初診からのオンライン診療開始、2021年日本皮膚科学会の乾癬分子標的薬使用施設として承認。アトピー性皮膚炎、尋常性乾癬、多汗症の治療に注力。