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火傷(やけど) 原因・症状・治療法

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火傷(やけど)のイメージ画像

火傷(やけど)とは

火傷(やけど)とは、熱によって皮膚や粘膜に障害が生じる外傷の一つで、医学的には「熱傷」と呼ばれます。火傷と聞くと、高温のものに接触して起こるものと考えている方が多いかもしれませんが、使い捨てカイロや湯たんぽなど44~50度ほどの低温のものでも、長時間接触していると火傷になり、これを「低温火傷」といいます。 特殊な火傷としては、電流による「電撃傷」や薬品(酸やアルカリ溶液など)による「化学熱傷」などがあります。 火傷は障害が及んだ皮膚の深さによって、Ⅰ度~Ⅲ度に分類されます。

火傷は日常的にありふれた外傷の一つですが、障害を受けた皮膚の深さや範囲によっては、命に関わることもあるので、あなどってはいけません。また、ケロイドや拘縮(こうしゅく)などの後遺症を残すこともあるので、注意が必要です。

写真提供:兵庫医科大学皮膚科 夏秋 優 先生

火傷(やけど)の主な原因と注意すべきシーン

火傷の原因で多いのは、以下のような熱い液体や家電製品などに接触することです。

  • ヤカンや鍋のお湯
  • 調理中の天ぷら油
  • コーヒーやお茶などの熱い飲み物
  • ストーブ
  • アイロン
  • ホットプレート

など

その他、高齢者や小さい子どもでは高温のお風呂が原因となることもあります。小さい子どもの場合は、炊飯器や湯沸かしポットから出てくる蒸気に手をかざしてしまい、火傷することもあります。また、夏には、花火による火傷もみられます。

火傷にならない対策としては、熱いものを不用意に扱わない、冷めていると思い込まないことが重要です。特に、小さい子どものいる家庭では、熱い液体の入った容器は子どもの手の届かないところに置く、子どもがストーブなどに近づけないようにするなど充分に注意しましょう。また、小さい子どもがテーブルクロスや電気コードなどを引っ張って、熱い飲み物がこぼれ、受傷する場合もあるので、テーブルクロスを使わず、熱いものを置いた周囲を整理することも大切です。

低温火傷の原因は、以下のような44~50度ほどの低温のものに長時間接触することです。

  • 使い捨てカイロ
  • 湯たんぽ
  • 電気あんか
  • ホットカーペット

など

低温火傷の場合は、皮膚の深い部分まで障害を受けているにも関わらず、初期段階では軽い症状にみえたり、気が付かないこともあるので、注意が必要です。低温火傷を放置していると徐々に症状が進行して、水ぶくれになったり、ただれたりして、経過が長引くことがあります。また、寝返りがうてない赤ちゃんや身体が不自由な方、温度感覚が鈍くなっている高齢者、糖尿病などで手足の血液循環が悪く皮膚感覚が鈍くなっている方などは低温火傷が重症化しやすいので、特に注意が必要です。

火傷(やけど)の症状

火傷は、障害の及んだ皮膚の深さによってⅠ~Ⅲ度に分類されます。

Ⅰ度熱傷 Ⅱ度熱傷 Ⅲ度熱傷
浅達性 深達性
表皮のみの障害。
皮膚が赤くなり、ヒリヒリと痛むことがあります。
真皮に及ぶ障害(真皮の浅い層までに障害は留まる)。
水ぶくれができ、強い痛みを伴います。皮膚は赤くなりますが、Ⅰ度熱傷と比べると薄い色調です。
真皮の深部に達する障害。
水ぶくれができ、皮膚はやや白くなります。知覚神経の部分的な損傷により、痛みの感覚が鈍くなり、痛みは比較的軽度です。
皮下組織に達する障害。
皮膚は黒色や褐色または白色になり、水ぶくれはできません。知覚神経が損傷し、痛みの感覚を失うため、痛みはほとんどありません。
やけどの深さのイメージ

火傷(やけど)の応急手当

火傷をしたら、できるだけ早く流水で患部を冷やすことが大切です。冷やすことで、火傷が深く進行するのを防ぎ、痛みを緩和させることができます。広範囲の場合は、お風呂のシャワーを使うと効果的です。ただし、広範囲の火傷に対して長時間流水で冷却すると低体温症の危険があるので、特に子どもや高齢者の場合は注意が必要です。
なお、氷や保冷剤を直接患部にあてての冷却は行わないでください。過度の冷却につながり、却って治癒が遅れることがあります。
衣服を着用した状態で火傷した時は、衣服を脱がせず、衣服の上から流水で冷やしてください。無理に脱がせると、水ぶくれが破れるなど患部が傷つき、痛みが強くなったり治癒が遅れたりすることがあります。
水ぶくれができている場合は破れないように気を付けましょう。
火傷した部位は、次第に腫れてくるので、指輪などの装飾品を身に着けている場合は早めに外してください。

火傷(やけど)の対処法・治療法

火傷の治療法は、火傷の程度によって異なります。火傷が浅いように見えても、皮膚科や形成外科を受診して治療を受けることが基本です。あくまでも目安ですが、火傷の範囲が広い(火傷をした本人の手のひらより広い)時、皮膚が赤く腫れて水ぶくれがある時、強い痛みが治まらない時、皮膚が白または黒くなっており痛みを感じない時は、速やかに医療機関を受診しましょう。

Ⅰ度熱傷では、炎症を抑える外用薬を使用することで、多くの場合は傷痕を残すことなく治ります。ただし、火傷の深度は自己判断することが難しく、時間経過とともに患部の様子が変化することもあるので、迷った場合には医療機関を受診しましょう。

浅達性Ⅱ度熱傷では、抗炎症成分が配合された軟膏や創傷被覆材を使って治療します。適切に治療されれば傷痕(瘢痕)はほとんど残しませんが、細菌感染を起こすと治癒が遅れ、傷痕になったりすることがあります。そのため、ある程度の広さの火傷では医療機関での治療をおすすめします。特に、顔面、手、関節部位、会陰部の火傷の場合は、狭い範囲であっても、医療機関での治療を受けましょう。

深達性Ⅱ度熱傷では、抗炎症成分配合の軟膏や創傷被覆材だけでの治療では治癒に時間がかかるので、医療機関で専門的な治療を受けましょう。
また、Ⅲ度熱傷では、皮膚が死んでしまった状態(壊死)になっています。壊死した皮膚をそのままにしておくと細菌の感染源になる恐れがあるので、基本的には壊死した皮膚を切除します。切除する皮膚の範囲が広い場合には、皮膚移植を行う場合もあります。
深達性Ⅱ度熱傷以上の場合は、傷痕や後述する後遺症を残すことが多いです。

火傷(やけど)の痕(あと)や後遺症

火傷の痕や後遺症としては、以下のような症状がみられることがあります。

色素沈着

浅い火傷では、傷痕や後遺症は残りませんが、色素沈着が起こることがあります。時間が経つと薄くなる場合が多いですが、予防や症状の悪化を防ぐために患部に紫外線が当たらないようにするとよいでしょう。

肥厚性瘢痕・ケロイド

傷痕のことを医学的には「瘢痕(はんこん)」といいます。みみず腫れのように赤く盛り上がった瘢痕を「肥厚性瘢痕」や「ケロイド」と呼びます。どちらも、かゆみ、痛み、ひきつれといった症状を伴います。ケロイドの方が程度が重く、元の火傷の範囲を越えて広がるものを指すといわれていますが、明確な区別はありません。
赤みが引いた平らな瘢痕は医学的には「成熟瘢痕」と呼びます。

瘢痕拘縮(ひきつれ)

瘢痕拘縮(はんこんこうしゅく)とは、傷痕がひきつれて、思うように関節などが動かせない状態を指します。手の関節部位、肘や手首、膝や足首、また首や腋窩(わきの下)が好発部位です。これらの場所に火傷をしてしまった場合は、早期に適切な治療を行うことが大切です。

火傷の後の瘢痕に、長い年月を経て、できものや潰瘍ができた場合は、皮膚がんの可能性があるため、迷わず皮膚科を受診してください。

まとめ

火傷とは、熱によって皮膚や粘膜に障害が生じる外傷の一つです。火傷による皮膚障害の程度は接触する熱源の温度と接触時間によって決まるので、高温のものであれば短時間で火傷になる一方で、44~50度ほどの比較的低温のものでも、長時間接触していると火傷になり「低温火傷」と呼ばれます。
火傷をしたら応急処置として、できるだけ早く流水で患部を冷やすことが大切です。冷やすことで、火傷が深く進行するのを防ぎ、痛みを緩和させることができます。治療法は、火傷の程度によって異なりますが、皮膚科や形成外科を受診して治療を受けることが基本です。

火傷は命に関わることもあり、また後遺症を残すこともあるので、日ごろから火傷をしないで済むように気を付けることが重要です。熱いものを不用意に扱わない、冷めていると思い込まないことが大切です。特に、小さい子どもは予想の付かない行動をとる場合があるので、子どもの手の届くところに熱いものを置かない、熱いものに近づけない、テーブルクロスは用いないようにするなど充分な対策を行いましょう。

監修

檜垣 祐子(ひがき ゆうこ)

若松町こころとひふのクリニック院長
医学博士、皮膚科専門医。東京女子医科大学附属女性生涯健康センター教授・副所長を経て現職。専門はアトピー性皮膚炎、皮膚心身医学。著書に『皮膚科専門医が教えるやってはいけないスキンケア』(草思社)など。

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