ひび・あかぎれとは
ひび・あかぎれとは、冬の気温低下による血行不良や乾燥、水仕事によって皮脂が失われることによって、皮膚バリア機能が低下し、その結果、皮膚表面に亀裂(ひび割れ)が入った状態です。 ひび・あかぎれは、部位やその深さによって症状が異なり、表皮の深い層や真皮にまで達すると痛みやかゆみ、出血を伴うことがあります。特に手指や手の甲は、水仕事で荒れやすいうえに、様々な物に触れたり外気にさらされる部位であるため、皮膚バリア機能が低下し、皮膚の柔軟性が失われ、ちょっとした刺激でひび割れが起こりやすい部位です。また、踵(かかと)は皮膚が厚く全体重がかかることから、手指よりもひび割れが深くなりがちです。
ひび・あかぎれの原因
ひび・あかぎれの主な原因を以下に示します。
- 気温低下や湿度低下による空気の乾燥
- 水仕事やアルコール消毒
- 加齢
- 皮膚への外的刺激
手指のひび・あかぎれの原因は、気温低下や湿度低下による空気の乾燥です。このような環境要因に加え、冬場は血行不良などによるターンオーバー異常を招き、質の良い角層が作られないうえに、うまく剥がれず堆積します。その結果、皮膚バリア機能が低下し、皮膚の柔軟性が失われることにより、ひび割れが起こりやすくなります。
質の良い角層とは、ターンオーバーが正常に行われることで作られ、皮膚バリア機能を保つためにとても重要です。なお、皮膚バリア機能が低下すると、外的刺激を受けやすくなります。特に、水仕事が多い主婦や理・美容師や医療・介護関係者などは、ひび・あかぎれが生じやすいといえます。
皮膚の構造と働きについては「皮膚の構造と働き」をご覧ください
また、踵(かかと)もひび・あかぎれが生じやすい部位の一つです。血行不良になりやすいうえに、角層が厚く、全体重がかかるため、ひび割れが深くなりがちで、治りにくい傾向があります。
ひび・あかぎれの症状
ひび・あかぎれは、主に手指や手の甲、かかとに生じやすいです。
手指や手の甲
手指は、常に様々な物に触れる機会が多く、指先にひび割れを起こしがちです。なお、ひび割れが真皮までに達した場合は、痛みを伴い、家事や日常での生活動作が制限されてしまうこともあります。また、手の甲は、物をつかむなど曲げ伸ばしの動作が多いため、柔軟性が失われると細かくひび割れたり、さらにはひび割れから出血したり、ゴワゴワした触感になったりすることも少なくありません。
かかと
かかとは、元々角層が厚く、全体重がかかることで絶えず負荷がかかるため、皮膚が厚く硬くなりがちです。柔軟性を失った皮膚は、細かいひび割れが生じてささくれのようにめくれ、繊維が引っかかり痛みを生じることがあります。また、ひび割れが深くなった場合は、歩行時に痛みを伴い、日常生活に支障が出る可能性もあります。
ひび・あかぎれの対処法・治療法、予防法
ひび・あかぎれの対処法・治療法
ひび・あかぎれが起きた場合は、まずは、市販の外用薬が使用できます。有効成分としては、血行促進効果のあるビタミンEやヘパリン類似物質、ひび割れの修復効果のあるアラントインやパンテノールなどの成分や、皮膚のターンオーバーを調節し皮膚を内側から柔らかくするビタミンA油などが効果的です。また、剤形については、使用感の良いクリームや水に強い軟膏など、好みや使用場面に合わせて選んでください。なお、ハイドロコロイド素材の絆創膏も外部刺激や水からの保護に適しています。ただし、症状が長引く場合は、皮膚科を受診してください。
ひび・あかぎれの予防法
ひび・あかぎれを悪化させないためには、乾燥を防ぎ、外部刺激を避けることが重要です。主な予防法は、以下の通りです。
- 手洗いや消毒の後は、水気をしっかり拭き取り、ハンドクリーム等で保湿する。
- 水仕事の際は、手袋などで保護する。
- 熱いお湯の使用を控える。
ハンドクリーム等で保湿する
ひび・あかぎれを予防するためには、こまめな保湿を心がけ、皮膚の潤いを保つことが重要です。水仕事の後は、水気をしっかりと拭き取り、ハンドクリームを必ず塗りましょう。消毒の後も同様です。乾燥が進むと皮膚バリア機能が低下し、外的刺激によりひび割れが起こりやすくなります。
手袋をする
水仕事の際は手袋などで保護することを心がけ、皮膚が直接水や洗剤に触れないようにしましょう。
熱いお湯の使用を控える
水仕事の際は、熱いお湯を避け、皮脂を過剰に洗い落とさないように気を付けましょう。熱すぎるお湯は、皮膚を乾燥させ、ひび・あかぎれのリスクを高める要因となります。
まとめ
ひび・あかぎれとは、冬の気温低下による血行不良や乾燥、水仕事による脱脂によって、皮膚バリア機能が低下し、その結果、柔軟性が失われ、皮膚表面に亀裂(ひび割れ)が入った状態です。ひび・あかぎれが進行すると、痛みや出血などにより家事や日常生活に支障をきたすことも少なくありません。
ひび・あかぎれの症状を悪化させないためには、こまめな保湿を心がけ、適切な治療法を選択しましょう。ただし、長期間症状が治まらない場合は、早めに皮膚科を受診し対応することも大切です。
監修
花房 崇明(はなふさ たかあき)
医療法人佑諒会 千里中央・江坂駅前・みのお花ふさ皮ふ科 理事長
医学博士、皮膚科専門医、アレルギー専門医、抗加齢医学会専門医。2004年に大阪大学医学部を卒業後、カリフォルニア大学サンフランシスコ校留学、東京医科歯科大学皮膚科講師などを経て、2017年に千里中央花ふさ皮ふ科を開院。2021年には、江坂駅前花ふさ皮ふ科、2024年には、みのお花ふさ皮ふ科を開院。メディア出演やSNSでの情報発信も多数行っている。