乾燥肌とは
乾燥肌とは、皮膚の水分量が低下し、肌がかさついた状態です。乾燥肌になると外部からの刺激や異物から身体を守ることができなくなり、肌トラブルを起こしやすくなります。
なお、皮膚の水分量低下は、皮膚バリア機能の低下が大きな要因です。このバリア機能を保つには、角層がとても重要で、角層がしっかり働くことで、健康な肌状態の維持につながります。角層の働きが不充分な場合に、バリア機能低下が起こり、乾燥肌になったり、さらには乾燥肌によるかゆみにつながったりする可能性があります。
皮膚の構造と働き
まず、皮膚の構造と働きについて以下に示します。
皮膚を断面で観察すると,おおまかに表皮・真皮・皮下組織の 3 層構造をとっています。その中の表皮は、さらに4つの層に分かれており、皮膚バリア機能を担っています。その最外層でバリア機能を保持しているのが角層です。角層は外界と直に接し、水分の蒸発や外部刺激から身体を守っています。角層は、皮膚の新陳代謝いわゆるターンオーバーの過程で作られ、ターンオーバーが正常に行われることで、成熟した質の良い角層によってバリア機能を保持できます。ただし、様々な原因によりターンオーバー異常(角化異常)が起こると、質の良い角層が作られないうえに、うまくはがれないため堆積し、皮膚の柔軟性が低下することで、細かいひび割れや粉吹きの原因となります。また、皮膚の外側には、皮脂膜があり、皮膚の表面を覆い、水分保持に関わっています。
乾燥肌の原因
乾燥肌になる原因はいくつかあります。ここでは、「主な原因や背景」と「よくある生活習慣」に分けて紹介します。
乾燥肌の主な原因や背景
- 気温低下や湿度低下などの季節的な要因
- 冬は、気温低下により血行不良となり、角層を作るターンオーバーが正常に行われず、皮膚バリア機能が低下します。また、湿度も低下し空気が乾燥するため、皮膚表面の水分も奪われがちです。また、エアコンを使用することにより、さらに部屋の湿度が低下するため、特に、暖房を使う季節は注意が必要です。
- 加齢による潤い低下
- 加齢により、皮膚の水分保持機能を果たす皮脂量が減っていくため、年齢を重ねるにつれて乾燥のリスクは高まります。特に女性は、女性ホルモンの分泌低下により、皮脂量が減少しがちで、より注意が必要です。
- 遺伝や体質
- 遺伝的要因としてアトピー素因や体質により慢性的に皮膚バリア機能が低下している場合、乾燥肌を伴い、アレルギーの原因物質や刺激に反応しやすくなります。かゆみを伴う湿疹を生じるアトピー性皮膚炎の発症メカニズムについては、様々 な因子が関係しますが、乾燥肌は重要な要因の一つです。
- 紫外線
- オゾン層の破壊により、紫外線の影響が強くなっています。紫外線は肌にダメージを与え、皮膚バリア機能を低下させ、より肌の乾燥を悪化させます。
生活習慣による要因
- 乾燥肌を悪化させる生活習慣
- 食生活の乱れや睡眠不足が、乾燥肌を悪化させる要因となる可能性があります。また、ストレスの多い現代社会において、ホルモンバランスが乱れると、ターンオーバーが正常に行われず、皮膚バリア機能の低下を招きます。
- 入浴の仕方
- 清潔志向が高まり、1日数回お風呂やシャワーを使うことも増えてきています。以下の点に注意してください。
- 汚れを落とすために肌をゴシゴシこすらない。
- 洗浄力の高すぎるボディーソープなどを使用しない。
- 熱いお湯を使わない、長湯しない。
もちろん肌を清潔にすることは大切ですが、肌の水分だけでなく肌を保護している皮脂まで取り除いてしまい、肌の乾燥を招きます。
乾燥肌の症状
皮膚バリア機能の低下が起こり、皮膚が乾燥した状態です。様々な原因により、角層を作りだす過程であるターンオーバーに異常が起こり、質の良い角層が作られないうえに、うまくはがれないため堆積し、皮膚の柔軟性が低下することで、細かいひび割れや粉吹きが生じます。
乾燥肌でみられる症状を以下に示します。
- 一見わからないが、肌を触るとゴワゴワする。
- 肌を触るとカサカサ、ザラザラする。
- 肌が細かくひび割れ、白い粉を吹いている。
- 洗顔後に肌がつっぱりやすい。
- 衣類の締め付けなどの物理刺激で肌がかゆくなりやすい。
また、肌が乾燥した状態が続くと、かゆみや赤み・湿疹の症状を伴う皮脂欠乏性湿疹を引き起こすことがあります。そうなると、皮膚の表面が白い粉を吹いたようになったり、ひび割れたりするだけではなく、赤みやかゆみを生じることもあります。さらに、皮膚を掻くことでかゆみの悪化や炎症を引き起こすこともあります。乾燥がひどい場合は早めに適切な治療を行い、必要に応じて皮膚科を受診してください。
乾燥肌の対処法、予防法(スキンケアなど)
乾燥肌の対処法や予防法を以下に示します。
- 保湿(スキンケア)
- まずは、肌に水分を与え、与えた水分が逃げないように日頃からスキンケアを行いましょう。保湿効果の高い成分(セラミドなど)配合の保湿クリームも効果的です。 乾燥の程度がひどい場合は、医薬品の保湿剤の使用がおすすめです。症状に合わせてヘパリン類似物質や尿素などの保湿剤や保護作用のあるワセリンなどもお使いください。乾燥し始めたら、早めの対処が重要です。刺激に敏感になっている場合は、肌に合った商品を使用するようにしましょう。
- 生活習慣
- バランスの良い食生活を心がけ、たんぱく質や脂質、炭水化物をはじめ、ビタミンやミネラルなどをバランス良く摂りましょう。 充分な睡眠をとり、ストレスを溜め込まない環境で、ホルモンバランスを整えましょう。 入浴は、肌をゴシゴシこすらず、熱いお湯や洗浄力の高すぎるボディーソープなどを避け、入浴後は、出来るだけ早めにスキンケアを行いましょう。
- 加湿
- 肌の乾燥を防ぐために湿度が低い冬の季節は、できるだけ加湿を心がけましょう。加湿器を使うのが効果的ですが、濡れたタオルを干すなど、手軽に加湿できる方法もあるので、試してみましょう。
- 紫外線対策
- 紫外線の影響を最小限にするために、以下のような対策をしましょう。
- 日焼け止めをむらなくしっかり塗る。
- 日傘や帽子を使う。
- 衣類で肌を覆い、できるだけ肌の露出を避ける。
- 紫外線の強い時間帯(午前10時~午後2時頃)の外出を控える。
まとめ
乾燥肌は皮膚バリア機能の低下と密接です。その要因としては、気温低下や湿度低下などの季節的なものだけではなく、生活習慣や紫外線の影響、体質的なことなど、普段意識していないことが原因となって引き起こされる場合があります。乾燥肌にならないための予防や、なった場合の対処を適切に行うことで、健康な肌状態を保つことができるので、日頃から乾燥肌対策を行っていきましょう。
監修
檜垣 祐子(ひがき ゆうこ)
若松町こころとひふのクリニック院長
医学博士、皮膚科専門医。東京女子医科大学附属女性生涯健康センター教授・副所長を経て現職。専門はアトピー性皮膚炎、皮膚心身医学。著書に『皮膚科専門医が教えるやってはいけないスキンケア』(草思社)など。