耳(外耳道)のかゆみとは
耳および外耳道のかゆみとは、様々な原因で外耳道に炎症が起きた結果、引き起こされる症状の一つです。
耳の入り口から耳の奥の鼓膜までを「外耳道」といい、表面は皮膚です。外耳道の皮膚は、非常に薄く、外部からの刺激に敏感なため、耳掃除などの物理的刺激で傷つき炎症を起こしやすい部位です。
一方、耳の外側(耳介)のかゆみは、イヤリングやピアス、シャンプーなどによるかぶれ(接触皮膚炎)が原因となること多いです。また、マスクの紐による物理的刺激で、耳介後ろ側の付け根にかぶれを起こすこともあります。
かぶれに関する詳しい情報は「(かぶれ(接触皮膚炎) 原因・症状・治療法)」をご覧ください
耳(外耳道)のかゆみの原因
外耳道のかゆみの主な原因を以下に示します。
- 過度な耳かき
- シャンプーなどによるかぶれ(接触皮膚炎)
- イヤホンや補聴器などによるかぶれ(接触皮膚炎)
- 花粉などによるアレルギー
- 蓄積した耳垢や耳の中に入った異物などの接触刺激
- 乾燥
など
過度な耳かきが発症の大きな要因といわれています。耳かきにより傷ついた皮膚は外部からの刺激に敏感になり、シャンプー、イヤホン、補聴器などによってかぶれが起こり、かゆみを誘発します。イヤホンや補聴器によるかぶれは、イヤホンや補聴器を長時間使用することで、外耳道の皮膚が蒸れて皮膚バリア機能が低下することで起こる場合もあります。また、花粉などに対するアレルギー反応により、かゆみが起こることもあります。
耳垢の状態によっては耳垢が蓄積し、耳垢の触れた部位が物理的に刺激されて、かゆみが生じる場合があります。同様に、散髪した髪の毛や小さなゴミなどが耳の中に入り込み、かゆくなることもあります。
また、冬は気温低下や湿度低下により、外耳道の皮膚が乾燥し、かゆみを引き起こす要因になります。
耳(外耳道)のかゆみの症状
外耳道のかゆみに伴ってみられる症状を以下に示します。
- 赤くなる(紅斑)
- 腫れる
- さらっとした耳垂れ
など
かゆいからといって外耳道の皮膚を掻き壊してしまうと、掻き壊した傷から細菌感染し、外耳道炎(外耳炎)へと悪化することがあります。外耳道炎は、非常に強いかゆみが生じたり、感染部位が赤く腫れあがったりするなど、繰り返しやすいのが特徴です。酷く腫れると外耳道をふさぎ、聞こえづらくなることもあります。また、耳が痛くなり、耳垂れは黄色く嫌な臭いのするどろっとした状態になります。
細菌感染が疑われる場合は、早めに耳鼻科を受診しましょう。
耳(外耳道)のかゆみの対処法・治療法、予防法
耳(外耳道)のかゆみの対処法・治療法
外耳道のかゆみには、原因に応じた適切な対処・治療が重要です。
蓄積した耳垢や髪の毛など異物の接触刺激が原因の場合は、綿棒で優しく耳掃除をしましょう。接触物が除去されれば、かゆみは治まります。しかし、力を入れて耳掃除をしたり、気持ちがよいからといって耳掃除を繰り返したりすると、外耳道の弱い皮膚を傷つけて炎症を起こしてしまうので注意してください。
炎症によるかゆみの場合は、炎症を抑えるステロイド外用薬を主に使用します。炎症を悪化させるので、耳かきは控えます。
細菌感染が疑われる場合は耳鼻科を受診し、適切な治療を受けてください。抗菌成分が配合された外用薬や点耳薬が使われます。冷たい薬液が耳の中に入るとめまいを起こす場合があるので、特に点耳薬を用いる時は注意してください。
耳(外耳道)のかゆみの予防法
外耳道のかゆみを予防するためには、以下の点に注意しましょう。
- 耳かきの頻度を抑える。
- 洗髪の際はシャンプー液が耳に入らないように注意し、すすぎ残しに気を付ける。
- 長時間のイヤホンなどの使用を控える。
耳垢は放っておいても耳の外に排出される仕組みになっているので、耳かきは本来しなくても問題ありません。耳垢は入口から1cm位のところに存在し、それ以上の奥を耳掃除する必要はありません。汚れが気になる場合でも、綿棒のような柔らかいものを用いて、耳の入り口付近を優しく拭き取ることで充分で、外耳道の奥を触らないようにすることが大切です。耳掃除の頻度は1ヵ月に1度程度にとどめ、外耳道の皮膚を傷つけないように注意しましょう。
かぶれの原因になるものとの接触は可能な範囲で避けましょう。イヤホンの長時間使用は、かぶれのリスクを高めるので、使用時間を制限することも効果的です。洗髪の際はシャンプー液が耳に入らないように注意し、すすぎ残しにも気を付けましょう。花粉症の方の耳のかゆみは、花粉によるアレルギーが原因の可能性もあるので、花粉に暴露しない工夫が有効な場合もあります。
耳のトラブルで受診すべきケース
耳のトラブルで受診すべきケースには、主に以下のような疾患・病態があります。
- 外耳道真菌症
- 外耳道真菌症は、外耳道や鼓膜表面に真菌(カビの一種)が繁殖することで起こります。強いかゆみ、痛み、耳垂れ、耳が詰まった感じ(耳閉感)がするといった症状が特徴です。治療には、抗真菌薬が使われます。
- 外耳道損傷
- 外耳道損傷とは、耳かきのしすぎや外的な衝撃によって外耳道が損傷し、出血や痛みを伴う病態です。損傷が軽度の場合は数日で自然治癒することが多いです。しかし、出血したところにかさぶたができると異物感やかゆみが生じて強く耳かきをしてしまい、症状を悪化させるので注意が必要です。損傷したところは細菌感染を起こしやすいので、感染を防ぐための治療が必要な場合もあります。
- 耳垢栓塞(じこうせんそく)
- 耳垢栓塞とは、耳垢が過剰に溜まって外耳道をふさいでしまう病態です。本来は自然に排出される耳垢ですが、耳掃除で耳垢を奥に押しやってしまうことなどで、外耳道をふさいでしまいます。そのため、聴力低下や、耳閉感、耳鳴りなどを引き起こします。また、入浴や水泳などで耳の中に水が入った際に、耳垢が膨張して、症状が強く出ることもあります。耳鼻科で耳垢を除去する処置が必要です。
- 外傷性鼓膜穿孔(がいしょうせいこまくせんこう)
- 外傷性鼓膜穿孔とは、異物が当たること(耳かき棒や綿棒で鼓膜を突くなど)や急激な気圧変化(平手打ちされた場合、飛行機の離着陸やダイビングなど)によって鼓膜が破れた病態です。鼓膜に穴が開くと痛みが生じ、時には出血、難聴、耳鳴りが起こることもあります。その一方で、鼓膜に穴が開いても気付かない場合もあります。通常、鼓膜の穴は自然にふさがりますが、修復のための手術が必要になる場合もあります。
- 急性・慢性中耳炎
- 中耳とは鼓膜の奥の空間で、中耳の内圧を調節する耳管が鼻の奥の咽頭とつながっています。中耳には細菌やウイルスなどは存在しませんが、耳管を通じて鼻咽腔の細菌やウイルスが侵入すると、中耳内に炎症が起こり、急性中耳炎になります。急性中耳炎が悪化すると鼓膜に強い炎症が起こり、膿が溜まり、鼓膜に穴が開くこともあります。中耳炎を発症すると耳痛、耳閉感、聴力低下が生じます。発熱することもあります。中耳炎は充分な治療を行わないと炎症が慢性化して、慢性中耳炎に進行することも多いので注意が必要です。 通常、抗菌薬の飲み薬で治療が行われます。鼓膜に炎症が波及したり、中耳に膿が溜まったりしている場合には、鼓膜切開による排膿手術が必要な場合もあります。
- 外耳道癌
- 外耳道癌は、外耳道に極めて稀に発生する癌です。初期症状には耳痛や聴力低下が含まれます。進行すると、耳からの分泌物や出血、耳の中の圧迫感がみられることもあります。顔の一部に感覚の低下やしびれるような違和感が起こることもあります。他の耳の疾患と症状が似ているので、耳のトラブルが長期間続く場合は耳鼻科を受診しましょう。早期発見と適切な治療が重要です。
これらのトラブルが発生した場合は、自己判断せずに速やかに耳鼻科を受診し、適切な診断を受けて治療しましょう。
まとめ
耳(外耳道)のかゆみとは、様々な原因で外耳道に炎症が起きた結果、引き起こされる症状の一つです。発症の大きな要因は、過度な耳かきといわれています。耳かきにより傷ついた皮膚は外部からの刺激に敏感になり、シャンプー、イヤホン、補聴器などによってかぶれが起こり、かゆみを誘発します。イヤホンや補聴器によるかぶれは、イヤホンや補聴器を長時間使用することで、外耳道の皮膚が蒸れて皮膚バリア機能が低下することで起こる場合もあります。症状の悪化や感染を防ぐためには、外耳道を過度に触らないことが大切です。
炎症によるかゆみの場合は、炎症を抑えるステロイド外用薬を主に使用します。炎症を悪化させるので、耳かきは控えましょう。
細菌感染や真菌感染が疑われる場合や長期間症状が治まらない場合は、早めに耳鼻科を受診し対応することが大切です。
監修
檜垣 祐子(ひがき ゆうこ)
若松町こころとひふのクリニック院長
医学博士、皮膚科専門医。東京女子医科大学附属女性生涯健康センター教授・副所長を経て現職。専門はアトピー性皮膚炎、皮膚心身医学。著書に『皮膚科専門医が教えるやってはいけないスキンケア』(草思社)など。