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おでき(毛嚢炎) 原因・症状・治療法

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おでき(毛嚢炎)のイメージ画像

おできとは

おできとは「毛嚢炎(もうのうえん)」の俗称で、「毛包炎(もうほうえん)」とも呼ばれる皮膚感染症の一つです。皮膚表面に常在している黄色ブドウ球菌などの雑菌が、免疫低下などをきっかけに、毛穴である毛包や毛包周囲の比較的限局した部位に炎症を生じさせた状態を指します。発症しやすい部位として、顔面、頚部、腹部、臀部、大腿部などの皮膚がこすれて摩擦を受けやすい場所に発症する傾向があります。

また、局所の熱感や圧痛も起こります。中心部に溜まった膿がすべて排膿されることで、痛みも和らぎ、その後治癒に向かうケースが一般的です。
おできは、症状が進行したものを「癤(せつ)」や「癰(よう)」と呼びます。また、顔にできたおできを「面疔(めんちょう)」と呼びます。

おできの原因

おできは黄色ブドウ球菌などの雑菌が毛穴に侵入・繁殖して起こります。通常、常在菌は外部の細菌の侵入・繁殖を防ぐ役割をもっていますが、小さな傷や摩擦、多汗、不衛生な環境といった物理的な要素に加え、風邪やストレス、睡眠不足、食生活の乱れなどにより身体の免疫力が下がると、細菌嚢のバランスが崩れ、黄色ブドウ球菌による感染が起こります。

おできは、全身の毛穴がある部位であれば、どこにでもできる可能性があります。特に顔や首、お腹やお尻、太ももなどにできることが多いです。

悪化の原因

おできは基本的に、数日~数週で中心部に溜まった膿がすべて排膿されることで治癒に向かうケースが一般的です。

しかし、途中で中心部を触ったり潰したりすると、再感染により症状が悪化し、治癒までにさらに時間がかかります。また、患部へのダメージにより、炎症が悪化し痕が残ったりすることもあるため、できるかぎり触らないことが大切です。

おできの症状

おできは黄色ブドウ球菌などの雑菌により、毛穴とその周辺に炎症が起こり、赤く腫れます。さらに症状が進行し、毛穴に膿が溜まり、痛みの神経を圧迫することで、つらい痛みを伴うことが特徴です。
この状態を「癤(せつ)」といいます。さらに症状が進行すると、隣接する複数の毛穴に炎症が及んだ状態である「癰(よう)」となり、強い痛みや発熱、倦怠感などの全身症状が起こる場合もあります。

おできの対処法・治療法、予防法

おできの対処法・治療法

症状が軽度の場合は、皮膚を清潔にすることで自然と治りますが、早めに治療することで、症状の悪化を防ぎ、治りを早めることができます。おできの治療のポイントは、炎症の原因となる雑菌の対処と、溜まった膿を早く出すことです。これにより治りを早めることができます。

治療には、抗菌薬が配合された化膿性皮膚疾患用の外用薬を使用します。症状によって治るまでに時間がかかることもあるため、用法用量に従って、塗ることが大切です。痛みを伴う場合は、塗布後ガーゼ等で覆い、患部を保護することも効果的です。治療の過程で膿がなくなり、腫れや痛みが緩和した後も、赤みが治まるまで塗り続けることも重要です。5~6日間使用しても症状が改善されない場合は、早めに医療機関を受診してください。
医療機関での治療は、症状に合わせ、抗菌薬の外用薬だけでなく内服薬も使用することがあります。症状の程度、進行度合いにより、薬による治療だけでは効果が得られない場合があるため、その際は薬だけでなく、あわせて患部を切開し排膿することもあります。

おできの予防法

おできの予防法について、以下に示します。

  • 皮膚についた余分な皮脂や汚れを洗い流し、皮膚を清潔に保つ。
  • 入浴後には化粧水やクリームを使用するなど、肌状態を整える。
  • 髭剃りなどで皮膚を傷つけないように気を付ける。
  • 睡眠や食生活を整え、身体の免疫力を高める。

「おでき」とその他の「できもの」の違い

おできは、見た目だけで判別することが難しい場合があります。おできと間違いやすい「ニキビ」と「粉瘤(ふんりゅう)」について紹介します。

ニキビ(尋常性ざ瘡)とは

ニキビとは、「尋常性ざ瘡(じんじょうせいざそう)」の俗称です。思春期に起こることが多く、ホルモンバランスの変化による皮脂の過剰分泌と、皮脂の分解物による角化異常により、毛穴の入り口が塞がり詰まることで皮脂が溜まり、白ニキビや黒ニキビができます。この毛穴の中には皮脂を好む「アクネ菌」が常在菌として存在しますが、これが増殖すると、炎症を引き起こし赤いニキビや膿を持ったニキビになってしまいます。強い炎症が起こると皮膚が傷つき、ケロイド状に盛り上がったり凹んだりして、瘢痕を残してしまうこともあります。
ニキビの治療には、ニキビ用の市販の外用薬が用いられます。また炎症が強く症状が酷い場合は、早めに皮膚科を受診してください。なお、ニキビは皮脂が多く分泌される、Tゾーンや頬、胸、背中などでよくみられます。

粉瘤(ふんりゅう、アテローム)とは

粉瘤(ふんりゅう)とは、「アテローム」とも呼ばれ、皮膚の内側に、角化細胞の陥入によって袋状の構造物ができ、袋の内部で剥がれ落ちた角質(垢)や皮脂が溜まってできる良性の腫瘍です。角質や皮脂は、袋の外には排出されず溜まり続けるため、少しずつ大きくなっていきます。粉瘤の盛り上がった部分の中央に黒点状の開口部がみられる場合、そこを強く圧迫すると臭いのあるドロドロとした物質が出てくることがあります。通常、自覚症状はありませんが、何らかの外的刺激により、細菌などの感染や袋が破れたりすることで、炎症が起き、赤みや腫れ、圧痛といった症状を引き起こすこともあります。
粉瘤の治療には、医師による外科的処置が必要です。
なお、粉瘤は毛穴がなくても発症するため、全身のどこにでもできる可能性があり、特に顔や首、背中、耳のうしろなどにできやすいです。
また、皮膚の内側に脂肪細胞が異常増殖してできた塊である「脂肪腫」と「粉瘤」は全く異なります。

このように見た目だけで判別することは難しいですが、個々に原因や症状は異なります。

まとめ

おできは、毛穴とその周囲に発症する皮膚感染症です。黄色ブドウ球菌などの雑菌が毛穴に侵入・繁殖することが原因で、炎症が引き起こされ発症します。毛を剃った時にできた「おでき」を「ニキビ」と勘違いするほど見た目は似ていますが、好発部位や年齢、原因などの違いを理解することが重要です。おできができてしまった場合は、患部をむやみに触ったり、自分で潰して膿を出そうとしたりせず、早めに適切な対処を行いましょう。

監修

檜垣 祐子(ひがき ゆうこ)

若松町こころとひふのクリニック院長
医学博士、皮膚科専門医。東京女子医科大学附属女性生涯健康センター教授・副所長を経て現職。専門はアトピー性皮膚炎、皮膚心身医学。著書に『皮膚科専門医が教えるやってはいけないスキンケア』(草思社)など。

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