しもやけ(凍瘡)とは
しもやけとは、寒暖差による局所の血管収縮によって血流が悪くなることで起こる皮膚障害です。医学的には「凍瘡(とうそう)」といいます。好発部位は、手足の指や耳などの露出部で、冷たい外気にさらされて血行が悪くなる末梢部位に発症します。症状としては、赤みを伴う浮腫性紅斑で、強いかゆみや痛みを伴い、ひどい場合は、水ぶくれや潰瘍ができます。子どもに多く発症しますが、成人や高齢者でも少なくありません。また、入浴後や就寝時に身体が温まると、かゆみが強くなるのが特徴です。
しもやけ(凍瘡)の原因
しもやけは、寒さによる血行障害が一番の要因で、単なる一過性の寒冷刺激ではなく、寒冷刺激の繰り返しと寒暖差が主な原因です。発症機序としては、寒冷刺激を受けると皮膚局所の小動静脈~毛細血管が収縮して虚血状態となり、その後、温かい環境や加温により小動脈の収縮は解除されて拡張するが、小静脈は収縮の解除が遅れるため、局所的な循環障害やうっ血が起こります。その部位では、血漿成分が急速に組織に滲出することで炎症が起こり、症状が現れます。
この寒暖差による血流障害の程度や回復にかかる時間には、個人差があります。しもやけになりやすい体質の方は、皮膚(真皮)の血管の収縮・拡張機能が低下しているため、血流の調整がうまくできず、血管周囲に炎症が起こった結果、しもやけが発症するともいわれています。
しもやけ(凍瘡)と凍傷の違い
しもやけ(凍瘡)と似た言葉に「凍傷」があります。凍傷は、雪山などの厳しい寒さのもとで皮膚や皮下の組織が凍結して起こる皮膚障害です。凍結した深度により症状の程度は変わりますが、酷くなると皮膚だけでなく筋肉や骨にも障害が及び、組織は壊死してしまいます。また、凍傷になると皮膚の感覚が失われます。
一方、しもやけは、外気温が3度程度で1日の寒暖差が10度以上になると発症しやすいため、厳冬期よりも初冬や初春に多い傾向にあります。強いかゆみやジンジンとした痛みで気づく場合が多く、酷い場合は、水ぶくれや潰瘍ができます。寒冷刺激の他にも発汗による湿潤(蒸れにより皮膚がふやけ、障害が起こりやすくなる)などが関与する場合があります。
しもやけ(凍瘡)の症状
主な症状は、強いかゆみや痛みを伴う鮮紅色から赤紫色の限局性の浮腫性紅斑です。悪化すると水疱・びらん・潰瘍に進行します。特に入浴後や就寝時に体温が上昇すると患部のかゆみ・痛がゆい感覚が強くなります。症状の見た目から、患部全体が赤紫色にうっ血して腫れた症状の「樽柿型」と母趾や小趾に1cm程度の小さな紅斑がたくさんできる「多形滲出性紅斑型」に分けられ、それらが混ざったものもあります。
しもやけは、子どもに多く発症するイメージですが、年齢を問わず成人や高齢者でも発症する傾向にあります。樽柿型は学童期に、多形滲出性紅斑型は成人や高齢者に多いといわれています。
しもやけに似た皮膚症状をきたす疾患に、「エリテマトーデス」があります。自己免疫疾患の一つで皮膚と全身の臓器に障害をきたすことのある疾患です。しもやけは、冬の季節が終わると自然に緩解することが多いですが、暖かくなっても症状が長引く場合や、症状の程度が強い場合は、皮膚科を受診してください。
しもやけ(凍瘡)の対処応・治療法、予防法
しもやけ(凍瘡)の対処法・治療法
症状が軽ければ、しもやけの効能を持つ市販の医薬品が使用できます。血行促進作用のあるビタミンE配合の外用薬や内服薬、かゆみを抑える抗ヒスタミン成分配合の外用薬などが使われます。炎症症状が強い場合は、ステロイド成分配合の外用薬も効果的です。
しもやけ(凍瘡)の予防法
しもやけになりやすい方は、寒さが本格的になる前に以下の予防法を行うようにしましょう。
- 防寒を心がける
- 外気との温度差を少なくするため、手袋、靴下、帽子、耳当てなどを利用しましょう。室内でも、寒いと感じる時は同様です。
- 血行を改善する
- 血行を改善するために湯船に浸かることや、しもやけになりやすい手や足の指の冷温交代浴(水と約40度のお湯に交互に浸けて血流を良くする)、手足のマッサージも効果的です。また、足の指がしもやけになりやすい方は、きつい靴やヒールの高いパンプスを履くことで、足の指の血行不良を招くので、避けるようにしてください。
- 水気をしっかりと拭き取る
- 汗をかいた時、水仕事の後などはしっかりと皮膚の水気を拭き取りましょう。汗や水気で手足が濡れると、外気温の影響を受けやすく、また蒸発する際に熱を奪うことで、急な皮膚温の低下につながります。特に汗で靴の中が蒸れた状態を放置すると足が冷える原因となります。
まとめ
しもやけ(凍瘡)は、寒暖差による局所の血管収縮によって血流が悪くなることで起こる皮膚障害です。手足の指や耳などの末梢部位に多く発症し、赤みを伴う腫れやかゆみ、痛みが生じます。さらに悪化すると、水ぶくれや潰瘍を伴うことがあります。また、身体が温まると、かゆみが強くなる特徴があります。しもやけは、年代を問わず発症します。
発症した場合は、血行不良や炎症を改善する市販の医薬品で対処しましょう。ただし、症状が長引く場合は、皮膚科を受診してください。しもやけは寒暖差が大きい初冬に起こることが多いため、「寒さが本格的になる前の時期から防寒対策をする」「血行改善のために入浴やマッサージを行う」など、しもやけにならないために早めに対策しましょう。
なお、症状が似た疾患との鑑別が難しいことがあるため、暖かくなる季節になっても症状が持続する場合は医療機関を受診しましょう。
監修
檜垣 祐子(ひがき ゆうこ)
若松町こころとひふのクリニック院長
医学博士、皮膚科専門医。東京女子医科大学附属女性生涯健康センター教授・副所長を経て現職。専門はアトピー性皮膚炎、皮膚心身医学。著書に『皮膚科専門医が教えるやってはいけないスキンケア』(草思社)など。