赤ちゃん・子どもの肌トラブル情報館

乳児に起こる湿疹(乳児湿疹) 原因・症状・治療法

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乳児湿疹のイメージ画像

赤ちゃん・子どもの皮膚の特徴

赤ちゃんや子どもの皮膚の特徴を以下に示します。

  • 皮膚が未熟で角層が薄い。
  • 皮膚バリア機能が弱く、外からの刺激を受けやすい。
  • 生後2~3ヵ月過ぎた頃から皮脂の分泌量が低下する。
  • 汗をかきやすい。

赤ちゃんや子どもの皮膚は、大人とほぼ同じ構造ですが、大人に比べて角層が薄く、皮膚バリア機能が未熟です。また、汗腺の数は大人とほぼ同じです。そのため単位面積あたりの汗腺の数が多く、汗をかきやすいという点も、赤ちゃんや子どもの皮膚の特徴です。皮膚バリア機能が弱いうえに、汗による蒸れなどによりさらに皮膚バリア機能が低下しやすく、外部刺激を受けやすい状態です。
加えて、赤ちゃんは、胎児期に胎盤を通じて母親から受け取った性ホルモンの影響で一時的に皮脂分泌量が多く、乳児脂漏性(しろうせい)湿疹など、赤ちゃん特有の肌トラブルが起こりやすい特徴があります。しかし、生後2~3ヵ月過ぎた頃には母親から受け取った性ホルモンの影響がなくなり、急激に皮脂の分泌量が減少し、乾燥しやすくなります。

このように、赤ちゃんや子どもは汗や外部からの刺激のほか、皮脂の過剰分泌あるいは乾燥による肌トラブルが発生しやすいです。

乳児に起こる湿疹(乳児湿疹)とは

乳児に起こる湿疹とは、生後2週頃から現れる皮膚に起きた炎症により生じる湿疹の総称で、「乳児湿疹」と呼ばれることもあります。皮膚に赤くポツポツとした発疹ができたり、時に皮膚全体が赤くなったりすることもあります。また、皮脂の分泌が多い、汗をかきやすい、刺激を受けやすい部位などにできることが多いです。

写真提供:兵庫医科大学皮膚科 夏秋 優 先生

乳児に起こる湿疹の原因と症状

乳児に起こる湿疹の原因は様々です。皮脂の分泌が過剰になることや、乾燥、汗、外部刺激によるかぶれによって湿疹が起こりやすいです。代表的な乳児に起こる湿疹を以下に示します。

乳児脂漏性湿疹(乳児脂漏性皮膚炎)

乳児脂漏性湿疹は、頭やおでこなど、皮脂の分泌が多い部位にできる湿疹です。多くは生後2週~3ヵ月頃までに発症します。この時期は、胎盤を通して胎児に移行した母体由来の性ホルモンの影響が残っているため、皮脂の分泌量が多くなる傾向にあります。皮膚の常在菌の一種であるマラセチア菌は、皮脂を栄養にして増殖するため、皮脂の分泌量が多くなると異常に増殖し、皮膚に炎症を引き起こしやすくなります。赤くポツポツした湿疹や、黄色がかったかさぶたができ、フケが出ることもあります。
また、赤ちゃんの皮脂腺は未発達なため、皮脂の分泌量が過剰になると毛穴が詰まりやすくなり、炎症を起こす場合があります。ニキビのようにみえるため、「新生児ニキビ」と表現されることもあります。

皮脂欠乏性湿疹

母体由来の性ホルモンの影響による皮脂の分泌過剰を終えて、生後6ヵ月頃より逆に皮脂の分泌が急激に減り、乾燥肌(ドライスキン)になります。肌がカサカサして白く粉が吹いたり、皮膚バリア機能が低下することで外部からの刺激を受けやすくなったり、炎症が起こるとかゆみや赤みを生じることがあります。

あせも

あせもは、首や背中など汗をかきやすい部位で汗を出す管(汗管)が詰まることにより、周囲皮膚組織に汗が漏れ出て発疹が生じることです。赤ちゃんや子どもは、汗をかきやすいことに加え、汗管の出口に汚れが溜まりやすいため、あせもができやすくなります。

赤ちゃん・子どものあせも(汗疹)についてはこちらをご覧ください

かぶれ(接触皮膚炎)

赤ちゃんや子どもの代表的なかぶれに、おむつかぶれ(おむつ皮膚炎)があります。おむつに覆われた部分が、汗などの蒸れにより皮膚がふやけて皮膚バリア機能が低下し、尿や便などの刺激でおむつと擦れ刺激を受け、赤い湿疹などが現れます。酷くなると、強いかゆみを伴い、ただれることもあります。
また、赤ちゃんの肌はデリケートなため、おむつ以外にも食べ物や繊維など外部刺激に接触することで、かゆみや腫れを生じる場合があります。特によだれが付着したままになることが多いため、口やあごの周りにかぶれができやすい傾向にあります。

おむつかぶれについてはこちらをご覧ください

乳児に起こる湿疹とアトピー性皮膚炎

乳児に起こる湿疹は様々で、アトピー性皮膚炎と共通してかゆみを伴う湿疹が特徴的な場合がありますが、アトピー性皮膚炎の経過や原因は異なります。

乳児に起こる湿疹のうち、乳児脂漏性湿疹では皮脂の分泌が過剰になることで起こる一過性の疾患です。皮脂分泌量が減少してくる生後3ヵ月頃までに、自然に改善することが多いです。また、あせもは夏場など高温多湿の時期に起こりやすかったり、おむつなど特定の刺激が加わる部分にかぶれが起こったりと、時期や原因が特定されやすい傾向があります。
その一方で、アトピー性皮膚炎は、遺伝的素因や環境因子など、様々な要因が関与する疾患です。慢性的に症状が良くなったり、悪くなったりを繰り返します。慢性的とは、乳児では2ヵ月以上、1歳以上では6ヵ月以上継続する状態です。湿疹を繰り返す場合は、アトピー性皮膚炎の可能性があるため、医療機関の受診が推奨されます。
このように、乳児期に湿疹を繰り返して医療機関の受診が必要な場合もあるため、日常のケアを大切にしながら、赤ちゃんや子どもの皮膚症状を経過観察するようにしましょう。

乳児に起こる湿疹と食物アレルギー

食物アレルギーは、特定の食物を摂取した時や吸い込んだ時だけではなく、触れることでも発症することがあります。特に乳児期に起こりやすい湿疹のように、湿疹などによって皮膚バリア機能が低下していると、アレルゲンが皮膚のバリアを通過し、食物アレルギーの発症に関わることがわかってきています(経皮感作)。
そのため、乳児に起こる湿疹は早いうちに治すことが大切です。また、日常よりスキンケアを行い、皮膚バリア機能を低下させないことは、乳児に起こる湿疹だけではなく食物アレルギーの予防にも重要です。

乳児に起こる湿疹の対処法・治療法、予防法

乳児に起こる湿疹の対処法・治療法

乳児に起こる湿疹に対しては、適切なスキンケアを行うことが重要です。まずは、皮膚を清潔に保つようにしましょう。低刺激性のボディソープをよく泡立てて洗い、しっかりと洗い流すことが大切です。お風呂上がりには、ワセリンや保湿剤を用いてスキンケアを行います。

また、かゆみや赤みを伴う場合は、抗ヒスタミン成分や非ステロイド性抗炎症成分を配合した外用薬で、かゆみや炎症を抑えます。赤ちゃんの肌は、非常にデリケートなため、長袖長ズボンなどを着用させたり、ミトンを使用したりして掻きむしらないように工夫することができます。こうした対処を継続することで、乳児に起こる湿疹は自然と軽快していくことが期待できます。

しかし、症状が長引く、腫れやかゆみが酷い場合は、早めに皮膚科や小児科を受診し、適切な治療を受けましょう。乳児に起こる湿疹には、アトピー性皮膚炎や食物アレルギーが隠れている可能性もあります。原因がわからず症状が長引く場合や、通院していても湿疹が治りにくいと感じる場合は、専門医に相談しましょう。

乳児に起こる湿疹の予防法

乳児に起こる湿疹を予防するためには、赤ちゃんの肌を常に清潔に保つことが大切です。汗をかいた時は、こまめに拭き取り、汚れを残さないようにします。入浴時は、湿疹ができている部位も含め、低刺激のボディソープやシャンプーで優しくしっかりと洗い、すすぎ残しのないようにしましょう。洗浄後は、清潔でやわらかなタオルで水分を拭き取ります。

清潔を保つだけでなく、保湿ケアも乳児に起こる湿疹の予防に効果的です。赤ちゃんの肌は、皮膚バリア機能が未熟で乾燥しやすい特徴があります。お風呂上がりなどは保湿剤を塗って乾燥を防ぎ、未熟なバリア機能を補うとよいでしょう。

まとめ

乳児に起こる湿疹とは、生後2週頃から現れる皮膚に起きた炎症により生じる湿疹の総称で、「乳児湿疹」と呼ばれることもあります。原因は様々で、皮脂の分泌が過剰になることや乾燥、汗、外部刺激によるかぶれによって湿疹が起こりやすいです。代表的な乳児に起こる湿疹は、乳児脂漏性湿疹、皮脂欠乏性湿疹、あせも、おむつかぶれなどです。これらの湿疹症状は、一時的なものであることが多く、清潔にしてスキンケアなどで対処しましょう。一方、遺伝的・環境的要因により軽快と悪化を繰り返す慢性疾患のアトピー性皮膚炎は、医療機関を受診し医師の診察を受けることが推奨されています。
このように乳児期に湿疹を繰り返し、医療機関の受診が必要な場合もあるため、日常のケアを大切にしながら赤ちゃんや子どもの皮膚症状を経過観察するようにしましょう。

監修

小西 真絢(こにし まあや)

巣鴨千石皮ふ科 院長 
東京都出身。杏林大学医学部卒業後、東京医科歯科大学皮膚科へ入局。2017年巣鴨千石皮ふ科開院。2020年初診からのオンライン診療開始、2021年日本皮膚科学会の乾癬分子標的薬使用施設として承認。アトピー性皮膚炎、尋常性乾癬、多汗症の治療に注力。

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