頭皮のかゆみとは
頭皮のかゆみは様々な原因で頭皮に炎症が起きた場合などに、最も多く自覚される症状です。頭皮の様子は自分ではよく見えませんが、かゆいところを触ってみるとブツブツと発疹ができていることに気付いたり、鏡を使って見ると赤くなっているところを見つけたりすることもあります。かゆみは頭皮の汚れが原因と思われがちで「毎日シャンプーしているのに」と悩んでいる方も多くみられます。
頭皮のかゆみの原因
頭皮のかゆみの原因は「頭皮の汚れ」と一括りにまとめられがちですが、実は様々です。主なかゆみの原因を以下に示します。
- 汗
- 頭皮には手のひらや足の裏に次いで多くの汗腺が存在し、汗をかきやすい部位です。汗をかくと皮膚が刺激され、かゆみが出やすくなります。また、汗をかいたまま長時間放置していると汗にかぶれることもあります。
- 皮脂
- 頭皮には毛包が多いため、皮脂腺が多く存在しています。皮脂には頭皮への刺激を防ぐ皮膚バリア機能としての役割があるため、適度な量の皮脂は必要です。しかし、過剰に分泌された皮脂が放置されると、皮脂を栄養とする毛包の常在菌(マラセチア菌など)が増殖して、かゆみ・フケなどの皮膚トラブルを起こすことがあります。
- シャンプーや染毛剤(ヘアカラー、ヘアダイ)などの成分
- シャンプーや染毛剤などに含まれる成分が頭皮に触れることで、刺激性のかぶれ(接触皮膚炎)が起こる場合があります。特に、一部の染毛剤ではアレルギー性のかぶれもみられます。
- 乾燥
- 頭皮が乾燥し皮膚バリア機能が低下すると、外部からの刺激や異物から頭皮を守ることができず、刺激性のかぶれを起こしやすくなります。頭皮の乾燥は過度な洗髪が原因の一つで、保湿成分でもある皮脂まで洗い流してしまいます。季節の変わり目や冬場など、頭皮が乾燥しやすい時期は、かゆみが生じやすくなります。
- 紫外線
- 頭皮は紫外線の影響を受けやすい部位です。紫外線によるダメージは頭皮の乾燥や炎症を引き起こし、かゆみの原因になります。
- ストレス
- 精神的なストレスも、頭皮のかゆみに影響を及ぼす場合があります。ストレス状態では皮膚の新陳代謝(ターンオーバー)が乱れ、皮膚バリア機能の回復が遅れ、乾燥しやすくなります。その結果、かゆみを引き起こしてしまうことも少なくありません。
頭皮のかゆみの症状
頭皮は自分で見ることができない部位なので気付きにくいですが、かゆみ以外にみられるその他の症状を以下に示します。
- 赤み(紅斑)
- かゆみを感じる範囲に赤みがみられる場合があります。かゆみと赤みだけの場合は炎症の兆候であり、皮膚が刺激に反応しているなど、何らかの炎症が起きていることを示しています。
- 丘疹
- かゆみを伴いブツブツとした丘疹がみられます。赤みも同時にみられることが多く、炎症が起こっていることを示しています。
- 乾燥
- 頭皮の角層がめくれ白っぽくカサカサした症状です。角層のめくれは剥がれ落ちてフケになります。頭皮の乾燥は皮膚バリア機能が低下している状態であり、刺激を感じやすく、かゆみを悪化させることも少なくありません。
- フケ
- カサカサした「乾性」と、ベトベトした「脂性」の2つに分けられます。乾性のフケは、洗浄力の強いシャンプーの使用や過度な洗髪により、頭皮に必要な皮脂が不足し、乾燥することで生じます。 一方、脂性のフケは、皮脂分泌が過剰になっていたり、不充分な洗髪で、過剰な皮脂が頭皮に残ることで起こります。また、頭皮の湿疹の代表である脂漏性皮膚炎は、マラセチア菌などの増殖が関与して生じると考えられますが、菌が直接の原因となる感染症ではありません。
これらの症状を正しく理解することで、かゆみの原因の特定と適切な治療法を選択できます。
頭皮のかゆみの対処法・治療法、予防法
頭皮のかゆみの対処法・治療法
かゆみが起こった状況やかゆみ以外の症状に応じて適切な治療方法を選択しましょう。
急な発汗に伴い一過性のかゆみが生じる場合は、かゆみを抑えるために抗ヒスタミン外用薬を使用します。冷却効果のあるスプレー剤も効果的です。
かゆみや赤みが一過性ではなく、ブツブツとした丘疹などがみられる場合は、炎症を抑えるためにステロイド外用薬を塗ることが一般的です。かゆみを抑えるために抗ヒスタミン外用薬を使用することもあります。ステロイド成分と抗ヒスタミン成分が配合された外用薬も市販されています。
充分シャンプーしても脂性のフケが治まらない場合は、マラセチア菌などの増殖が関与する脂漏性皮膚炎の可能性があります。マラセチア菌に対する抗真菌成分が配合された外用薬の使用が一般的ですが、抗真菌成分を配合したシャンプーもあります。また、炎症に対する治療として、ステロイド外用薬も用いられます。
頭皮のかゆみの予防法
頭皮のかゆみは、日常のケアや習慣の改善によって予防可能な場合が多いです。頭皮を健康に保ち、かゆみを予防するための基本的な方法を以下に示します。
- 頭皮の状態に合わせたシャンプーの使用
- 頭皮の皮脂を適度に残すため、シャンプーは頭皮の状態に合わせて選びましょう。頭皮が乾燥しているのに、洗浄力の強いシャンプーを使うと、皮脂を過剰に洗い流すことで乾燥が悪化してしまいます。逆に、皮脂分泌が多いのに洗浄力の弱いシャンプーを使うと、余分な皮脂が残ってしまいます。
- 適切な洗髪の仕方
- シャンプーの前に温水で充分に予洗いします。シャンプー液をそのまま直接頭皮につけると、洗浄力が強すぎたり、シャンプーが刺激になったりするので、まず充分に泡立てます。爪を立てずに指の腹でマッサージするように洗うことが大切です。頭皮や髪にシャンプーが残らないように、温水でしっかりすすぎます。熱いお湯は皮脂を洗い流してしまうので避けてください。また、髪が濡れたままの状態で放置すると菌が繁殖しやすいので、ドライヤーなどで早めに乾かすことを心がけましょう。
- 乾燥対策
- 乾燥を防ぐために、頭皮用のケア製品で保湿することも効果的です。また、頭皮は紫外線のダメージで乾燥しやすいので、日傘や帽子などで直射日光を避ける工夫も大切です。
まとめ
頭皮のかゆみとは、頭皮に炎症が起きた場合などに、最も多い自覚症状です。頭皮のかゆみの原因は「頭皮のよごれ」と一括りにまとめられがちですが、実は様々です。頭皮のかゆみを引き起こす主な原因には、汗・皮脂・シャンプーや染毛剤(ヘアカラー、ヘアダイ)・乾燥・紫外線・ストレスなどがあります。かゆい部位には、炎症が起こっていることも少なくなく、頭皮に触れたり、鏡でかゆみのある部位を見たりすることで確認できることもあります。
予防には、適切なシャンプーの選択と洗髪方法が大切です。
かゆみを伴う炎症には、炎症を抑えるステロイド外用薬やかゆみを抑える抗ヒスタミン外用薬で早めに対処しましょう。搔いてしまうと悪化しやすいので、かゆい部分を冷やすなどの工夫をしましょう。
ただし、長期間症状が治まらない場合は、早めに皮膚科を受診し、正しい診断を受けましょう。
監修
檜垣 祐子(ひがき ゆうこ)
若松町こころとひふのクリニック院長
医学博士、皮膚科専門医。東京女子医科大学附属女性生涯健康センター教授・副所長を経て現職。専門はアトピー性皮膚炎、皮膚心身医学。著書に『皮膚科専門医が教えるやってはいけないスキンケア』(草思社)など。