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乾燥肌のかゆみ(皮脂欠乏性湿疹) 原因・症状・治療法

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乾燥肌のかゆみ(皮脂欠乏性湿疹)のイメージ画像

乾燥肌のかゆみ(皮脂欠乏性湿疹)とは

乾燥肌のかゆみとは、皮膚の乾燥が続いた時に、それに伴って自覚される症状の一つです。かゆみとともに、皮膚に赤みやポツポツとした丘疹、ひび割れなどの湿疹の症状が現れた状態を「皮脂欠乏性湿疹」と呼びます。 皮膚が乾燥し皮膚バリア機能が低下した状態が長く続くと、通常ではかゆみが生じないわずかな刺激に対してもかゆくなってしまう「かゆみ過敏」状態となります。かゆくて掻き壊すことなどで炎症が起こり、湿疹が現れます。湿疹の炎症はさらなるかゆみを招き、「かゆみ→掻き壊し→炎症」の悪循環(イッチ・スクラッチ・サイクル)に陥ります。

皮脂欠乏性皮膚炎
写真提供:兵庫医科大学皮膚科 夏秋 優 先生

乾燥肌のかゆみ(皮脂欠乏性湿疹)の原因

皮膚は、表皮の一番外側にある角層や皮脂、汗などの働きによって乾燥や外部刺激から身体を守っています(皮膚バリア機能)。また、皮膚にはかゆくなるという特有の自覚症状があり、かゆみを知覚する神経(かゆみ神経)が存在しています。かゆみ神経には、皮膚表面近くの表皮まで伸びているものと、表皮の下の真皮で留まっているものがあります。皮膚が乾燥し、バリア機能が低下すると、真皮に留まっていたかゆみ神経も表皮の中へと伸長し、表皮内のかゆみ神経の数が増え、通常ではかゆみが生じないわずかな刺激に対してもかゆみが起こるようになってしまいます。この状態を「かゆみ過敏」といいます。
かゆみに対しては搔きたいという衝動が起き、掻き壊してしまうと、皮膚に炎症が起こり、湿疹を生じたりします。

皮膚の乾燥は、以下のような様々な原因で起こります。

  • 季節(特に冬)
  • 低湿度の生活環境
  • 高齢者、乳幼児:高齢者は皮膚の機能低下、乳幼児は皮膚の機能が未成熟なため
  • 体質:アトピー体質など
  • 紫外線
  • 入浴の仕方

皮膚が乾燥する原因などの詳しい情報は「乾燥肌 原因・症状・治療法」をご覧ください。

乾燥肌のかゆみ(皮脂欠乏性湿疹)の症状

初期症状では、皮膚がカサカサ、ザラザラと乾燥し、皮膚表面が細かく白い粉を吹いたような状態(鱗屑、落屑)になります。進行すると皮膚に亀裂が入り、かゆみを感じやすくなり、わずかな刺激でもかゆみが生じることもあります。かゆくなって患部を掻き壊すと、炎症が起こり、赤みやポツポツとした丘疹が現れ、湿疹の状態になります。炎症はさらなるかゆみを招き、「かゆみ→掻き壊し→炎症」の悪循環(イッチ・スクラッチ・サイクル)に陥ってしまいます。

掻き壊した部位が傷になって出血し、引っ掻き傷(掻破痕)がみられ、色素沈着になることもあります。

乾燥肌のかゆみ(皮脂欠乏性湿疹)の対処法・治療法、予防法

乾燥肌のかゆみ(皮脂欠乏性湿疹)の対処法・治療法

乾燥肌のかゆみには、かゆみ止めの他、皮膚バリア機能の修復も必要です。そのため、かゆみを抑える抗ヒスタミン成分に加え、抗炎症成分、保湿成分、血行促進成分が配合された外用薬で治療します。赤みや丘疹などの湿疹が高度の場合は、抗炎症効果の高いステロイド外用薬も使用されます。また、皮膚バリア機能を回復させるために、組織修復を助けるパンテノールや保湿成分のヘパリン類似物質などを含む外用薬も効果的です。
かゆみのない部分にも、保湿クリームなどをしっかり塗り、かゆみ過敏にならないようにしましょう。

乾燥肌のかゆみ(皮脂欠乏性湿疹)の予防法

乾燥肌のかゆみは、皮膚を乾燥させないことで予防できます。代表的な予防法を以下に示します。

保湿(スキンケア)
日頃から保湿クリームや保護作用のあるワセリンなどでスキンケアを行いましょう。乾燥がひどい場合は、医薬品の保湿剤も効果的です。症状に合わせて、ヘパリン類似物質や尿素などの保湿剤をお使いください。スキンケアは入浴後できるだけ早めに行いましょう。
加湿
湿度が低い時期、特に冬の季節は、加湿器などを使用し、居住空間を加湿しましょう。
適切な入浴方法
入浴時は皮膚をナイロンタオルなどでゴシゴシ擦らず、熱いお湯や洗浄力の高すぎるボディソープなどの使用は避けましょう。また、ボディソープなど洗浄料の洗い残しがないよう充分すすぐことも大切です。
衣類の工夫
かゆみ過敏の状態では、わずかな接触刺激でもかゆみが起こることがあるので、ゴワゴワした素材の衣類はできるだけ避けましょう。
紫外線対策
日光を長時間浴びることで皮膚がダメージを受けるので、日焼け止めや日傘などで紫外線対策を行いましょう。
規則正しい生活習慣
充分な睡眠を取るなどストレスを溜めないよう気を付けましょう。また、バランスの良い食事を心がけましょう。

まとめ

乾燥肌のかゆみとは、皮膚の乾燥が続いた時に、それに伴って自覚される症状の一つです。かゆみとともに、皮膚に赤みやポツポツとした丘疹など湿疹の症状が現れた状態を「皮脂欠乏性湿疹」と呼びます。
皮膚が乾燥し皮膚バリア機能が低下した状態が長く続くと、通常ではかゆみが生じないわずかな刺激に対してもかゆみが起こってしまう「かゆみ過敏」状態となります。かゆくて掻き壊すことなどで炎症が起こり、赤みや湿疹が現れます。炎症はさらなるかゆみを招き、「かゆみ→掻き壊し→炎症」の悪循環(イッチ・スクラッチ・サイクル)に陥ります。

かゆみを抑える抗ヒスタミン成分、抗炎症成分が配合された外用薬で治療します。赤みや湿疹が強い場合は、抗炎症効果の高いステロイド外用薬を使うことも効果的です。
また、もともとある皮膚の乾燥を解消するために、保湿成分やバリア機能の低下している皮膚の修復を助ける成分を配合した外用剤を使用します。

空気が乾燥する冬に発症しやすいので、乾燥肌にならないよう早めに保湿クリームなどによるスキンケアを心がけることが重要です。

ただし、症状が強い場合や繰り返す場合、長期間治まらない場合は、早めに皮膚科を受診しましょう。

監修

檜垣 祐子(ひがき ゆうこ)

若松町こころとひふのクリニック院長
医学博士、皮膚科専門医。東京女子医科大学附属女性生涯健康センター教授・副所長を経て現職。専門はアトピー性皮膚炎、皮膚心身医学。著書に『皮膚科専門医が教えるやってはいけないスキンケア』(草思社)など。

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