虫さされ情報館

虫除け剤(忌避剤・虫除けスプレーなど)の基礎知識

この記事をシェアする
  • Facebook
  • line
  • X
虫除け(虫よけスプレー)のイメージ画像

虫除け剤(忌避剤・虫除けスプレーなど)とは

虫除け剤(忌避剤)とは、吸血害虫を接近・侵入させないようにするためのアイテムです。ここでは、吸血害虫を忌避する目的で、人体に適用するものについて紹介します。医薬品や医薬部外品で認められている有効成分は、ディートとイカリジンです。一見すると、虫除け剤はどれも同じにみえるかもしれませんが、有効成分やその濃度によって効果を発揮する吸血害虫の種類や効果の持続時間が異なります。また、使用できる年齢に制限があるなど、用途や年齢に合わせたものを選ぶことが大切です。剤形は、スプレータイプ、ミストタイプ、シートタイプなど様々な形態のものがあります。

虫除け剤の種類と成分

医薬品と医薬部外品の虫除け剤として使われている成分には、ディートとイカリジンの2種類があります。いずれも、蚊などの吸血害虫の二酸化炭素などへの感知能力を撹乱させる効果があり、一時的に吸血行動を防ぐ効果があります。
虫除けのメカニズムは同じですが、ディートには、長い歴史があります。イカリジンは比較的新しい成分ですが、においがなく、特に使用年齢に制限がないなど、家族で使いやすいなどの特徴があります。

ディート

蚊などが寄ってくるのは、人間のにおいや温度、汗や呼気中の二酸化炭素などを感知しているためです。ディートには、蚊などが持つこの感知能力を撹乱させる働きがあります。
濃度が10%以下のものは医薬部外品、12%以上のものは医薬品になります。医薬品と医薬部外品では忌避できる虫が異なります。医薬品では、つつがむし病という感染症を媒介するツツガムシにも効果があります。また、使用開始年齢に制限があり、12%以下のものは生後6か月から、30%のものは12歳からの使用です。なお、12歳未満では、1日の使用回数にも制限があります。

忌避できる吸血害虫

医薬品
適用害虫:蚊、ブユ(ブヨ)、サシバエ、アブ、トコジラミ(ナンキンムシ)、ノミ、イエダニ、マダニ、ツツガムシ
医薬部外品
適用害虫:蚊、ブユ(ブヨ)、サシバエ、アブ、トコジラミ(ナンキンムシ)、ノミ、イエダニ、マダニ、ヤマビル

イカリジン

イカリジンも、虫除けのメカニズムは、ディートと同様です。日本では、2015年に承認され、医薬部外品の虫除け剤に使用されるようになりました。同じ医薬部外品でもディートとは効果を発揮する吸血害虫の種類が異なります。使用年齢に制限がなく、塗る回数にも上限がないことから、使用しやすい成分です。

忌避できる吸血害虫

適用害虫:蚊成虫、ブユ、アブ、マダニ、イエダニ、トコジラミ(ナンキンムシ)、ノミ、ヌカカ、ヤマビル※

  • メーカーによって適用害虫が異なります。

このほか、雑貨品ですが、虫の嫌がる天然精油を配合したものもあります。

虫除け剤と殺虫剤の違い

虫除け剤と殺虫剤は、使用目的が異なります。殺虫剤は「害虫の駆除」、虫除け剤は「害虫の忌避」です。
殺虫剤に使われる成分で、現在、日本国内で広く使用されているものとしては、ピレスロイド系殺虫成分があります。ピレスロイド系殺虫成分とは、除虫菊の花に含まれている殺虫成分です。ピレスロイド系殺虫成分は、哺乳類、鳥類などには毒性が低いといわれており、虫の神経系(魚類、爬虫類などは含む)に作用して麻痺させることで害虫を駆除する効果を示します。現在も電子蚊取り、エアゾールタイプなど様々な製品が販売され、使用されています。一方、虫除け剤として、害虫の忌避の目的でピレスロイド系殺虫成分が空間で効果を発揮するものに使われています。吊り下げ型や置き型、空間にスプレーするタイプがあり、天然精油と組み合わせたものなどもあります。

なお、人体に適用する虫除け剤は、ここまで述べてきたように、ディートやイカリジンなどを配合し、直接皮膚に塗布することで、吸血害虫の二酸化炭素への感知能力を撹乱させることで、虫除け効果を示します。

虫除け剤の選び方

アウトドアを楽しみたい場合は、ディートやイカリジンなど、使用する方の年齢や使用場面に合わせて適切な虫除け剤を選びましょう。持続時間については、ディート30%、イカリジン15%配合のものは概ね8時間ですが、あくまでも目安です。汗で流れ落ちたりすると持続時間が短くなります。まずは塗りむらがないように満遍なく塗ってください。また、虫除け剤を塗っているからと過信せずに衣服で肌を覆い、露出部を減らすなどの対策をしてください。
なお、医薬品の虫除け剤には、ツツガムシの忌避の効能があります。

虫除け剤は、忌避できる虫や使用年齢などに違いがあるので、製品に書かれている注意書きをよく読んで選ぶとよいでしょう。

子どもや赤ちゃんへの虫除け剤の使用について

ディートは、生後6か月未満の子どもには使用できません。また、12歳未満では顔に使えず、使用回数にも制限があります。長時間にわたって外に出る時は、特に注意しましょう。
一方、イカリジンは使用年齢や使用回数に制限がないため、家族で使用したい場合は使いやすいです。
ただし、スプレーやミストタイプの虫除け剤を子どもに使用する場合は、吸い込んでしまう可能性があるため、子どもの肌に直接噴霧しないでください。一旦、大人の手に取ったものを子どもの肌に優しく塗り広げましょう。またシートタイプの虫除け剤は手に取ってから塗布する必要がないので便利です。

まとめ

虫除け剤は、吸血害虫から人体を守るのに便利なアイテムです。人体に適用する虫除け剤の有効成分としては、ディートとイカリジンが知られています。医薬品と医薬部外品があり、それぞれ忌避できる虫や使用できる年齢、使用回数に制限があるなど特徴があるので、使用する方の年齢や忌避したい吸血害虫の種類に応じて選ぶようにしましょう。

監修

夏秋 優(なつあき まさる)

兵庫医科大学医学部皮膚科学教授
1984年兵庫医科大学卒業。1989~1991年カリフォルニア大学サンフランシスコ校留学、1991年より兵庫医科大学皮膚科学講師、准教授などを経て2021年より現職。専門分野は衛生害虫による皮膚疾患、皮膚疾患の漢方治療。著書にDr.夏秋の臨床図鑑 虫と皮膚炎 改訂第2版(Gakken, 2023)、止々呂美哀歌(NRC出版, 2022)や医ダニ学図鑑(共著、北隆館, 2019)、日本の毒蛾(共著、むし社, 2024)などがある。

この記事をシェアする
  • Facebook
  • line
  • X
ページトップに戻る