ダニの種類と刺された時の症状
ダニの種類は多く、吸血性ダニ類として、トゲダニ類(イエダニなど)、マダニ類、ツツガムシ類など、本来は野生動物に寄生し、人からも吸血するダニがいます。また吸血しないものの、偶発的に人を刺すツメダニ類や、人を刺しませんがアレルギーの原因となるチリダニ類(コナヒョウヒダニなど)など、ダニは様々な形で人々の健康に影響を及ぼし、問題になっています。
ダニの種類によって、生息している場所や刺された時の症状の特徴が異なります。
-
イエダニ
-
イエダニ刺され症状
-
マダニ (タカサゴキララマダニ雌)
-
マダニ刺され症状(タカサゴキララマダニ若虫)
- ※ 写真提供:兵庫医科大学皮膚科 夏秋 優 先生
室内のダニ
イエダニ | ネズミに寄生し、主に夜間室内へ侵入して人の血を吸います。下腹部や、わき腹、太ももの内側などの被覆部を刺すことが多いです。刺された場所には赤いブツブツができ、強いかゆみを伴います。 |
---|---|
ツメダニ | 畳やカーペットなどで発生する他のダニを餌にして生息しているため、餌が発生しやすい時期に増加します。吸血することはなく、偶発的に人を刺します。刺されると強いかゆみと赤いブツブツができます。 |
コナヒョウヒダニ ヤケヒョウヒダニ |
室内で比較的多くみられ、布団やカーペット、畳などのほこりがたまりやすい場所に生息しています。また開封後の小麦粉やお好み焼き粉などに侵入し、長期間常温保存している間に繁殖することもあります。人を刺すことはありませんが、糞や死がいがハウスダストとしてアレルギーの原因となり、気管支ぜんそくやアレルギー性鼻炎を起こすことがあります。また、ツメダニの餌としても知られています。 |
屋外のダニ
マダニ | 野生動物に寄生しますが、野外レジャーなどの際に人の衣服に乗り移り、皮膚に吸着して吸血します。吸血されている時には自覚症状がなく、吸血して膨らんだマダニを見て、ホクロと勘違いして気が付くこともあります。マダニの吸着部にかゆみや赤み(紅斑)が現れることもあります。吸血しているマダニを無理に引き抜くと、口器が皮膚に残り、炎症を起こす場合があります。また、マダニが媒介する感染症として、重症熱性血小板減少症候群(SFTS)、日本紅斑熱、ライム病、ダニ媒介性脳炎などがあり、重篤な症状を引き起こす可能性があるため、気が付いたら医療機関を受診して処置を受けましょう。 |
---|---|
ツツガムシ | ダニの一種で、限られた場所の野山や河川敷に生息し、幼虫だけが皮膚に吸着します。幼虫に刺されると、かゆみを伴う赤いブツブツが現れます。また「リケッチア」という病原菌を保有している幼虫に吸着されると「ツツガムシ病」と呼ばれる感染症を起こします。5~14日間の潜伏期間を経てから39度以上の高熱と関節痛や倦怠感が現れ、その後全身にかゆみのない赤い発疹が現れる感染症です。治療が遅れると重症化する可能性があるので、すぐに医療機関を受診しましょう。 |
ダニと蚊に刺された時の違い
個人の体質や刺された頻度によって、症状の差はありますが、ダニと蚊では、刺されやすい部位が異なります。
ダニ | 衣類に覆われた部分も含め、わき腹や太ももなど体のやわらかい部分が刺されやすい。 |
---|---|
蚊 | 手足や顔などの露出した部分が刺されやすい。 |
また、こちらの記事もご覧ください。
ダニ刺されの対処法・治療法、予防法
ダニ刺されの対処法・治療法
イエダニやツメダニなど、ダニに刺されて赤みやかゆみが現れた時は、かゆみを止める抗ヒスタミン成分や、炎症を抑えるステロイド成分を配合した市販の外用薬を使用しましょう。5~6日間使用しても症状が改善しない場合は、皮膚科を受診してください。
マダニに刺された時は、吸着しているマダニを無理に引き抜いて口器が皮膚に残ると、炎症を起こす可能性があるため、皮膚科を受診して適切な処置を受けてください。またマダニやツツガムシに刺された後に、高熱や関節痛、倦怠感が現れた場合は、感染症の可能性があるため、すぐに医療機関を受診してください。
虫の種類を問わず、皮膚科の受診時は、刺された虫を持参するか、スマートフォンなどで虫体の写真を撮って見せるとよいでしょう。適切な治療の参考となる場合があります。
ダニ刺されの予防法
イエダニなど室内に生息するダニに刺されないためには、ダニを駆除することが重要です。イエダニは、ネズミに寄生しているため、室内の対策だけでは対応できません。宿主となるネズミの駆除が必要になるため、自治体の保健センターや専門の駆除業者などに相談しましょう。
ツメダニは、餌となるコナヒョウヒダニなどを駆除することも効果的です。布団やカーペット、畳などのほこりがたまりやすい場所を、定期的に掃除することが大切です。また、乾燥や熱に弱いため、「部屋の風通しをよくする」「布団などを乾燥機にかける」などといったことも効果的です。
マダニやツツガムシなど屋外に生息するダニには、「肌の露出を控える」「虫除け剤を使用する」「帰宅後にダニが皮膚や衣類などに付着していないか確認する」といったことも効果的です。
まとめ
ダニ刺されは、赤みやかゆみといった皮膚症状だけでなく、ダニの種類によっては、重篤な感染症を引き起こす場合もあります。気が付かないうちに刺されていることも多いため油断は禁物です。日頃から室内の掃除などのダニの駆除や、山など草木が多い場所に出かける時は肌の露出を減らすなど、ダニに刺されないための対策をしましょう。
イエダニやツメダニに刺された場合は、虫刺されの市販薬が効果的です。もし、マダニやツツガムシなど危険なダニに刺された場合は、早急に皮膚科を受診しましょう。
監修
夏秋 優(なつあき まさる)
兵庫医科大学医学部皮膚科学教授
1984年兵庫医科大学卒業。1989~1991年カリフォルニア大学サンフランシスコ校留学、1991年より兵庫医科大学皮膚科学講師、准教授などを経て2021年より現職。専門分野は衛生害虫による皮膚疾患、皮膚疾患の漢方治療。著書にDr.夏秋の臨床図鑑 虫と皮膚炎 改訂第2版(Gakken, 2023)、止々呂美哀歌(NRC出版, 2022)や医ダニ学図鑑(共著、北隆館, 2019)、日本の毒蛾(共著、むし社, 2024)などがある。