皮ふにおけるタンニン酸のプロテクト効果の可視化
研究の背景
タンニン酸は五倍子※などから抽出・精製された成分で、たんぱく質や金属イオンなどと結合し、不溶性化合物を形成(凝集)することで不活化作用を示します。 医薬品では下痢止め薬に配合され、粘膜の保護(プロテクト)作用により下痢の症状を緩和すると考えられています。ただしタンニン酸の作用については粘膜組織を用いた報告が多く、皮ふのバリア機能における報告は少ないです。 そこで、タンニン酸の皮ふでのプロテクト効果を明らかにするため、皮ふのどの部位で作用を示しているか研究を行い、プロテクト効果の可視化に挑戦しました。
- ※ 五倍子:ウルシ科植物の葉に昆虫が刺傷を作ることでできた虫こぶを乾燥させたもの
タンニン酸
タンニン酸は、多くの植物に含まれるポリフェノール化合物であるタンニンの一種です。タンニン酸は赤ワイン、柿渋、茶などに含まれ、これらを飲食した時に感じる渋みは、舌粘膜の収れん(引き締まり)によって起こる特有の感覚です。また、古くは生皮から皮革への皮なめし剤としても利用され、なめし=tanningが語源とも言われています。
研究の概要
タンニン酸の皮ふにおけるプロテクト効果の可視化
テープストリッピング処理(TS)により皮ふバリアを破壊し、蛍光色素を滴下しました。蛍光色素の浸透度合いにより、タンニン酸が皮ふのどの部位で作用してプロテクト効果を示すのか確認しました。
富山県薬事総合研究開発センター共焦点レーザー顕微鏡にて撮影
タンニン酸を塗らない場合は、皮ふの中まで蛍光色素が浸入した。
タンニン酸を塗布すると、角層でプロテクト効果を発揮し蛍光色素の浸入を防ぐことができた。
タンニン酸の皮ふにおける炎症発生の抑制効果
刺激物の代表として、汗(人工汗)による炎症(赤み)の発生がタンニン酸塗布により抑えられるか確認しました。
テープストリッピングにより皮ふを荒らした翌日にタンニン酸処理を行い、人工汗をかけて赤み(炎症)を起こしました。
タンニン酸の前処理により、人工汗による皮ふの赤み(炎症)発生を抑えた。
Experimental Dermatology 2018 改変
今後の展望
様々な刺激により皮ふのバリアとなる角層はダメージを受けます。ダメージを受けた皮ふでは、汗などの様々な刺激が皮ふトラブルの原因となります。
今回、明らかとなったタンニン酸のプロテクト効果は、皮ふ表面において様々な刺激の浸入を抑える可能性がありますので、今後あらゆる肌トラブルに広く応用できることが期待されます。
key word
- タンニン酸(成分)
- 皮ふの炎症(症状)
- 収れん・プロテクト(目的とする作用)
- 外部からの刺激物(原因)