研究・開発ストーリーオデキュアEX
Chapter01専用薬がなかった「おでき」の悩みに寄り添うため
おできに向き合うきっかけは、社員の声
オデキュアEX誕生のきっかけは、「お尻におできができて痛い時がある」という社員の悩みでした。市場調査を進めると、おできは20~60代男女の3分の1が1年に1回は経験※しています。頭から足まで身体のさまざまな場所にでき、困っている人も多いことが分かったのです。
ひどい人は月1回以上の頻度※でおできができていて、手や服に触れる、イスに座って圧迫されるなど、患部が刺激されるたびに痛みが走り困っていることも調査で判明しました。
(※2020年アスマーク調べ、20-60代男女n=20,280)
池田模範堂では初めてのおでき治療薬
調査では、そんなおでき経験者の多さとは逆に、薬を使って治す人が少ないことも分かりました。その理由のひとつに、「どんな薬を使えばよいか分からないから」というご意見があります。
開発をスタートした当初、世の中にはおできを治すことを分かりやすく伝えた商品がなかったのです。つまり化膿性皮ふ疾患の商品において、パッケージに記載される効能もおできの正式名称である「毛嚢炎(もうのうえん)」としか書かれていないことから、おできに使える薬がお客様に伝わらない状況でした。そこで、毛嚢炎をわかりやすく「おでき」と表現した治療薬の開発を決めたのです。
また薬を使わないもうひとつの理由が「つらくても我慢していたら治る」という気持ちでした。おでき自体は、1週間前後で自然治癒することも多い症状です。ただ調査で、多くの人が「痛いのは本当につらい」、「少しでも早く治したい」という気持ちを抱えていることを知りました。そんな方たちへ、快適な治療法を届けたい!という想いがオデキュアEXには込められています。
Chapter02数々のハードルを乗り越えて生まれた製品
スルファジアジン、溶けない有効成分に試行錯誤する日々
私の部署では開発品の処方設計や定量方法の開発など、製品の研究開発をメインに担当しています。
今回、オデキュアEXを開発するにあたり最も苦労した点は、乳化状態を維持することでした。一般にクリームは、混ざり合わない水と油を界面活性剤※1の力を利用して均一な状態(乳化)にしたものであり、長時間その状態を維持する必要があります。しかし、オデキュアEXに配合しているスルファジアジンは、水にも油にも溶解しない有効成分であり、すぐにクリームが分離してしまいました。
開発初期は界面活性剤の種類や量を調整しましたが、良い結果にならず、厳しい状況が続きました。試行錯誤を重ねた結果、水と油の比重差を少なくすることで、乳化状態が大きく改善されることがわかり、分離の課題を達成できたときの喜びはひとしおでした。スルファジアジンのような溶けない有効成分をクリーム中に分散させる、というノウハウを学べたことは、私にとって大きな財産になっています。
※1 水にも油にも親和性のある物質
試作と失敗を繰り返すことで、自信ある商品へ
ただ、処方ができたからと言ってそこで終わりではありません。工業化、量産化に向けて徐々にスケール(体積)を増やして試作を重ねるのですが、そこでも上手く調製できない日々が続きました。
さらには有効成分の品質を確認するための試験や開発品の容器の検討など、いくつもの試作と失敗を繰り返してできあがったのがオデキュアEXです。肌への刺激感の少なさや痛いおできへの効果など、苦労した分、自信を持っておすすめしたいです。
Chapter03池田模範堂だからこそできた技術と経験の結晶
大量生産化にも立ちはだかる製造方法の課題
私が担当している工業化検討の業務は、研究開発部が開発した処方を、工場の設備で問題なく大量生産できるように検討することです。研究開発部がこだわって設計した処方を、製造現場でどうやったら負担が少なく、効率的に生産できるかを考えて検討を実施する、いわゆる橋渡し役ですね。工業化検討では設計された処方を変えることができないので、いかに製造方法で工夫できるかがポイントになります。
製剤設計グループの話にも出てきましたが、オデキュアEXの有効成分であるスルファジアジンは、水にも油にも溶けにくく、現在の弊社製品では唯一の結晶分散型のクリームです。結晶分散型のクリームの工業化検討に携わったのは初めての経験だったので、当時はその処方内容に衝撃を受けました。
経験と技術の積み重ねが生み出した製品
オデキュアEXが、通常の製造方法で生産できないことは分かっていました。様々な課題がありましたが、処方検討と同様に試行錯誤を繰り返したどり着いたのが、原料の乳化槽への投入の仕方と、その投入タイミングの工夫です。
私が過去に担当した別の製品でも、事情があり、原料投入のタイミングを工夫したことがありました。この時の検討の詳細については、「技術移転書」にしっかり記録として残しています。「技術移転書」とは、新製品の開発・検討の経緯や注意点をまとめ、生産サイドへ受け渡すものです。この経験や記録がなければ、特殊なタイミングでの原料投入は思いつかなかったかもしれません。オデキュアEXは池田模範堂だからこそできた、経験と技術の蓄積の賜物だと感じています。
Chapter04「おでき薬」というニッチな市場だからこそ、チャンスがある
積み重ねた市場調査が、製品開発の第一歩に
弊社は、これまでムヒブランドを中心とした商品ラインナップで市場を切り拓いてきました。営業部門としても新たなカテゴリー開拓、新たなブランド創出による売上拡大を図る必要があり、その中で化膿性皮ふ疾患の市場に目を向け、おできの治療薬がないことに着目しました。ドラッグストアでの調査で、おできに対して一定のニーズが見込めたことも開発の契機となりました。
そして2021年の発売以来、お客様にとっては聞きなじみのない「おできの治療薬」の認知拡大が私たち営業部の命題です。今ではオデキュアEXという分かりやすいネーミングに加え、パッケージの背板(パッケージの背面部分)に大きくおでき治療薬と掲げることで、一般にも浸透し店頭でも手に取りやすいものになった、と感じています。
お客様の声が日々の励みに
そんなオデキュアEXですが、お客様からは日を増すごとに多くの声が届いています。「おできに対する効果」など、ポジティブなご意見も多く、開発、販売に関わったメンバーのひとりとして大きな励みになっています。
オデキュアEXは、皆が目を向けていないため、一目でどんな薬かわかってもらうことが難しく、普及の可能性が低いと思われた市場だからこそチャンスをつかめたケースのひとつです。今後も、幅広い視野で商品育成、開発に取り組み、オデキュアEXのような商品をひとつでも多く届けられるよう邁進していきます!